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特集 エンジニアリングが実現する 高機能 高品質 生産性向上

図版:設備と建築が一体となった機能的施設のイメージ

設備と建築が一体となった機能的施設のイメージ

エンジニアリングの流れ

生産施設など機能的施設の構築においては,経営計画や生産計画に基づいた基本計画の策定と,確かな技術に裏づけられた高品質の施工が重要である。当社エンジニアリング事業本部(以下,エンジ本部)は,施設の現状調査,課題抽出,企画立案といった計画初期段階から,基本計画~設計,コミッショニング,調達,施工(建屋工事・据付工事),運営まで,施設のライフサイクル全フェーズにわたり,専門知識を有するエンジニアが担当。多くの関係者と連携し,プロジェクトを推進している。

なかでも総合建設業として,当社は設計(Engineering),調達(Procurement),建設(Construction)の一連の工程を請け負うEPC業務に強みがある。建築部門とエンジ本部が一体的にEPCを行うことで,最短スケジュールでプロジェクトを成功に導くことが可能だ。また,豊富なプロジェクト実績に裏づけられた建築と生産設備の融合は,各フェーズでの付加価値の高い提案を可能にしている。

計画初期段階での検討の重要性

生産施設では,生産設備への要求仕様をまとめた基本計画に基づき建築や建築設備の計画へ,という流れでプロジェクトが進行する。もし,この基本計画の検討が不十分なまま基本設計や詳細設計へと進んでしまうと,予算との大幅な乖離が生じた場合などに,基本計画から見直しになることもある。

そのため当社では,着実な進行で,手戻りのない施設立上げをサポートすべく,計画初期段階からの関係者へのヒアリングや現状調査などに力を入れている。検討事項は,生産する製品の品質,施設全体にかかるコスト,工場の環境,低炭素・省エネへの配慮,あるいは作業員の安全性など,内容は多岐にわたる。検討を通じ,顕在化している課題だけでなく,潜在的なニーズを明らかにすることで,根本的な解決方法の検討や,予算を考慮した設備・機器の仕様設定が可能になるのだ。

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引渡し後の運用支援

生産関連施設では特に,日々の生産活動が円滑に行われることが最大のミッションとなる。当社は引渡し後も機器・システムの保守,定期点検などの運用支援を継続的に実施している。実際の運用のなかで出てくる改善ニーズへの対応や生産品目の変更,生産能力拡大に対応するための機器・システムの改造・更新などのサポートも,プロジェクト担当者が継続して行っている。

また最近では,医薬品業界を中心にニーズが高まる施設管理業務のアウトソーシングに対応するため,グループ会社の鹿島建物総合管理と連携し,高機能生産施設の管理サービスへの取組みを推進。生産設備や医薬品についての規制を熟知したエンジ本部が,保全計画の立案や新しい施設管理手法の提案などを支援し,一歩進んだ施設管理サービスを提供している。

図版:エンジニアリング事業本部の業務範囲とプロジェクトの流れ
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バイオ医薬品製造を支える鹿島の独自技術

モジュール化医薬品製造施設
KaMoS®
(Kajima Modular Facility System)

建築の一部を運搬可能なユニットとして工場で製作し,現場に運んで組み立て, 連結する「モジュール化建築」は,品質確保や施設立上げのスピードアップの面でメリットがあり,近年,さまざまな施設に応用が進められている。当社はこのモジュール化技術を応用し「モジュール化医薬品製造施設KaMoS®(ケイモス)」を開発した。施設を構成するモジュールはコンテナ運搬可能な大きさで,医薬品研究・製造施設に要求される気密性,清掃性,除染対策などの性能も万全だ。

この技術によって,世界のどこにでも日本国内で建設するのと同等の,高品質なバイオクリーンルームを短期間で建設可能となる。また,組立て後の分解,再運搬,再組立ても可能だ。施設建設後の製造室の拡大縮小や間仕切り変更などにもスピーディに対応でき,将来的にもフレキシブルな運用が可能となる。新薬開発・製造のスピードアップを後押しする新技術だ。

図版:KaMoS

KaMoSは,垂直方向3段のモジュール(上から順にシーリングモジュール,フロアモジュール,アンダーフロアモジュール)からなる。これらを水平方向に連結することで施設を構成する

図版:一般的な運搬用コンテナに入るサイズに分解可能

一般的な運搬用コンテナに入るサイズに分解可能

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連続熱式
不活性化処理装置ユニット
HAZARD BUSTER®

ワクチンやバイオ医薬品の製造に伴う排水には有害な微生物やウイルスが含まれる場合がある。当社はそれらの不活性化(無害化)処理技術として,従来技術と比べてコンパクトかつ省エネルギーの「連続熱式不活性化処理装置」を開発,納入してきた実績をもつ。そして新たに,装置のユニット化により,さらなる省スペース化と高品質化を叶える「HAZARD BUSTER®(ハザードバスター)」を開発した。装置の製作,検査,試運転までを工場内で行うことができるため,現地施工の場合と比べて安定した品質と工期短縮を実現する。

また,排水量や対象となる微生物・ウイルスの不活性化温度条件などのデータをもとに,運転時の温度状態をシミュレーションするプログラムを併せて開発。このプログラムにより,設計段階においても,装置内の排水が必要な不活性条件を満たすことの検証が可能になった。ユニットのラインナップは処理流量1,3,6,9m3/時の4種類があり,排水量に適した能力を選択でき,無駄のない設備投資をサポートする。

図版:連続熱式不活性化処理装置

連続熱式不活性化処理装置。この装置をユニット化したHAZARD BUSTERは,3m3/時の処理性能のもので約2.4×5.0×2.5(高さ)mの大きさ

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Topic

モジュール工法で短工期と可変性を両立

6月6日,「アステラス製薬東光台バイオ治験薬製造施設再構築PJ」の竣工式が茨城県つくば市で行われ,事業・工事関係者約30名が参列した。

同社は,最先端の遺伝子治療や細胞医療などを活用した研究開発を強化しており,同社つくばバイオ研究センター内ではバイオ技術に関する研究を進めている。このプロジェクトは,既存のバイオ治験原薬棟に隣接して,新たにマルチ治験薬棟を建設するものである。迅速な新薬開発の実現のため,フレキシブルな施設の切替対応とスピーディな施設立上げを可能にするというコンセプトのもと,従来はリスク管理の観点から室を分けていた工程を同一室で行うボールルームの考え方と,モジュール工法を取り入れた,画期的な治験薬製造施設として建設された。

アステラス製薬東光台
バイオ治験薬製造施設再構築PJ

場所:
茨城県つくば市
発注者:
アステラス製薬
設計:
当社建築設計本部
生産設備:
当社エンジニアリング事業本部
用途:
治験薬製造施設
規模:
S造 2F 延べ1,597m2
工期:
2018年8月~2019年5月
(関東支店施工)
図版:完成予想パース

完成予想パース

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