ホーム > KAJIMAダイジェスト > March 2015:特集「東北復興フォトグラフィ」 > Interview 東日本大震災から4年──今,思うこと

KAJIMAダイジェスト

Interview 東日本大震災から4年──今,思うこと

専務執行役員東北支店長
赤沼聖吾

赤沼東北支店長は岩手県宮古市の出身で,
東北復興への思いはひとしお強い。
発災当時,日本建設業連合会の東北支部長も務め,
業界全体の陣頭指揮もとってきた。
震災から4年という節目に,今の思いを聞いた。

復興の先陣を切るという思いで

あの日から4年が経とうとしています。本社・全支店から届けられる救援物資や,応援を含め復旧工事に従事する社員の真剣な取組みに,当社の強固な組織力と個々の質の高さを改めて実感したことを思い出します。発災直後,被災地で津波による災害を目の当たりにし,“早期復興は,がれきの早期処理が重要”と考え,阪神・淡路大震災などで廃棄物処理を経験した社員を中 心に,直ちに準備を開始しました。廃棄物の量は,宮城県だけで約1,000万t,一般廃棄物の約15年分に相当し,当社が担当した石巻ブロックは,約300万tと最大規模。これまで誰も経験したことのない膨大な量で,リサイクル率を向上させながら,期間内に完了できたのは,数多の技術やノウハウを結集させたことに加え,自分たちが先陣を切るという思いで厳しい状況に身を投じてきたからだと自負しています。この気概が,後の復興まちづくり事業や除染作業,インフラ整備などに継承され,今,復興事業を前進させていると考えております。

復興まちづくりは「因数分解」

一方で,復興がなかなか進まないという報道もあります。かつ,被災地域の人口流出が止まらず,自治体を悩ませているのも現実です。住民の方々からは,安全・安心な生活基盤をいち早く再構築することに期待が寄せられています。幾多のハードルがある「復興まちづくり」は,時間との戦いです。ある経済団体の会合で,自治体の担当者が,時間がないなかで“無数の四次方程式”を解くようだと訴えるのを聞きました。無数の要素が複雑に絡み合う現状を,そう例えたのです。この命題に対して,私は“因数分解して解かなければならない”と考えております。つまり,複雑な“復興後の将来像”を方程式に見立て,その式を産業,住宅,防災,福祉,エネルギーなどの要素に因数分解して,各要素を同時並行・総合的に解決していかなければなりません。要素が多いほど,高次元の方程式になり,満足度の高い復興まちづくりになります。これを実現するためには,各要素の多くの専門家を必要とします。

改ページ

民間の力を活用した仕組みづくり

東日本大震災のように被害が甚大かつ広域にわたる場合,被災した各自治体は,経験もないなか弱体化した状態で「復興まちづくり」を強いられます。因数分解をして,それを解く力はありません。そのため民間の力を活用する仕組みづくりが重要と考えています。

現在,国土交通省東北地方整備局による復興道路での事業促進PPP(Public Private Partnership)や,都市再生機構が復興まちづくり事業に採用しているアットリスクCM(Construction Management)方式など,民間の力を計画段階の上流から活用し,復興の加速化に貢献しています。私は,両手法を発展させ,これまで以上に民間の力が投入される仕組みを提案しています。具体的には,応援や支援といった立場ではなく,自治体行政の中枢に,復興の構想から実行までを担う権限と責任をもった産・学・官のスペシャリスト―グランドデザインアーキテクト―をおき,都市づくりをはじめ各要素の専門家を束ね実行する構図をイメージしています。ここで描かれる復興後の姿は,各種インフラから最終的な建造物,そして産業や人々の暮らしまで,トータルなものでなければなりません。グランドデザインアーキテクトに必要な資質は,人を束ねる力,公共に資するという強い意志です。当社には,その責務を担うだけの総合力があると信じています。

福島県に足を運ぶと,他の被災地にはない極めて厳しい状況を痛感します。しかし,ここに新たな可能性があると感じております。その一例が,経済産業省が中心となり推進する「福島・国際研究産業都市構想」です。原子力発電所の廃炉に向けた研究開発拠点,ロボットや最先端医療の研究・実証拠点などを福島県に創設するとともに,それらを支える「まちづくり」を含んだ幅広い構想です。注目すべきは,産・学・官が連携して,新たな産業を創り出すことで,人口の流出に歯止めをかけ,人口を増加方向へシフトさせようとしていることです。

「まちづくり」の根幹をなすのは人であり,復興道路が立派にできても,使う人や産業がないまちでは意味がありません。

5年という復興集中期間が来年度終了し,その後不透明な部分がありますが,“復興まちづくりの成功なくして,復興の成功なし”,4年間を走り続けてきた今の思いです。この言葉を皆で共有し,これからも東北復興に向け,尽力していきます。

ホーム > KAJIMAダイジェスト > March 2015:特集「東北復興フォトグラフィ」 > Interview 東日本大震災から4年──今,思うこと

ページのトップへ戻る

ページの先頭へ