中心市街地が大きな津波被害を受けた岩手県陸前高田市。三陸海岸にゆったりと弧を描く広田湾に面する海岸線には,江戸時代からの防風・砂防・防潮林があり,7万本ともいわれた松林は名勝・高田松原とよばれ,県内屈指の海水浴場として長く親しまれてきた。しかし,巨大な津波と地盤沈下は,この松原を消失させた。
松原復旧後の完成予想パース
被災前(2008年10月)
被災直後(2011年3月)
陸前高田の海岸線に,2本の防潮堤が再び姿を現しはじめた(2014年12月)
復興が進むまちを守るために,2本の防潮堤の建設が進む。新しい防潮堤はT.P.(東京湾平均海水面)+3mの第一線堤と,T.P.+12.5mの第二線堤からなる。第一線堤は,復旧が予定される松原を保護し,従来の2倍以上の高さとなる第二線堤は,数十年から百数十年に一度の津波に耐えるよう計画されている。また,想定を超える規模の津波が発生した場合でも,堤の倒壊までの時間を少しでも長くする,あるいは全壊に至る可能性を減らす,粘り強い構造としている。
使用する石材は75万m3に及び,地元からの調達が困難であったことから,全国各地から調達。主として海上輸送で搬入するため,湾内に荷揚げ用の仮設桟橋と仮防波堤を2基ずつ建設した。
一方で盛土材は,高台移転の宅地造成工事で大量に発生する残土を再利用する。締固め回数はGPSで管理して,効率的かつ高精度の施工を行っている。
盛土を被覆するコンクリートは,現場打ちからコンクリート二次製品のブロックに変更となったが,ブロック同士を連結することで強固な構造とする。
2013年3月の着工から2年。2015年末には2本の堤が姿を現す予定で,現在は第二線堤部分の堤体盛土工事などが急ピッチで進められている。
防災施設の建設は,岩手県宮古市の閉伊川や宮城県名取市の貞山運河の水門の復旧工事など,各地で展開している。
周辺の港湾施設が全て被災し,使用できなかったために設けた仮設桟橋
地盤改良工の杭打機が立ち並ぶ。地中に砕石を使用した杭を造成し,地盤を強化している
全体計画。2本の防潮堤の長さは,東西約1.8kmに及ぶ(地図は2013年3月時点)
防潮堤詳細。防災施設としての機能だけでなく,白浜青松の風景の再生,維持も考慮している
【工事概要】
高田地区海岸災害復旧工事
- 場所:
- 岩手県陸前高田市
- 発注者:
- 岩手県
- 受注者:
- 鹿島・佐武建設・明和土木・中澤組特定共同企業体
- 設計:
- パシフィックコンサルタンツ
- 規模:
- 防潮堤工(第一線堤)1,768m 防潮堤工(第二線堤)1,872m 人工リーフ工1,200m 水門工1基
- 工期:
- 2013年3月~施工中