トピックス 2021

「富岳」新型コロナウイルス対策プロジェクト飛沫感染チーム
ゴードン・ベル特別賞を受賞

鹿島が参画しているスーパーコンピュータ「富岳」を活用した新型コロナウイルス対策プロジェクト「室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策」(代表者:理化学研究所/神戸大学坪倉教授)が、2021年 ゴードン・ベル賞COVID-19研究特別賞を受賞しました。

ゴードン・ベル賞は、計算科学分野で最も権威のある賞の一つで、スーパーコンピュータによる大規模計算を科学・技術分野に応用した研究のうち、その年に最も優れた成果を出した研究チームに授与されるものです。昨年から、新型コロナ研究に関する特別賞を設け、スーパーコンピュータを使って感染症の理解や世界的な危機の解決に寄与した研究を表彰しています。

当社は、このプロジェクトに建設会社として唯一参画し、室内環境シミュレーションの独自ノウハウの提供や計算モデルの作成、感染リスク評価に関する助言など、「富岳」を使用したシミュレーションを行っています。

鹿島の役割

鹿島では、SARS(2002年)以来の感染症の流行を受けて、2011年より室内環境におけるウイルス飛沫シミュレーションの研究開発を行ってきました。独自に開発したプログラムおよび自社保有の計算サーバーや可視化実験装置を用いて、飛沫感染に対する建築計画および設備計画上のノウハウを蓄積しています。それらを活かし、さまざまな室内環境の計算モデルの作成と境界条件設定などの室内環境シミュレーションや結果に対する検証、感染リスク低減策の提案を行いました。

KaTRISとシンガポール国立大学との
共同研究

また、KaTRIS (Kajima Technical Research Institute Singapore、 鹿島技術研究所シンガポールオフィス)とシンガポール国立大学との共同研究の成果として、天井ファンが設置された室内において、感染者の近くで15分間会話した場合の感染確率を、「富岳」を用いて定量的に示しました。これは、KaTRISとシンガポール国立大学で共同実施してきた天井ファンの新型コロナウイルス感染リスク低減効果の研究を、「富岳」プロジェクトにおいて発展させたものです。

天井ファンはシンガポールをはじめ東南アジア地域で広く使われていますが、このように上下方向の気流が供給されることで、もっとも感染リスクが高くなる「発生直後の飛沫の塊」を急速に希釈し、感染リスクの大幅な低減に有効であることを示しました。このような研究成果が感染症の理解などに役立ち今回の受賞につながりました。

今後、当社は、この「富岳」プロジェクトへの参画を通して「感染拡大防止」という社会課題の解決に向けた取り組みに貢献するとともに、活動を通して得られる新たな知見を活かし、今後も感染防止、感染対策を支援してまいります。

図版

劇場での飛沫シミュレーション

提供:理研、神戸大 協力:豊橋技科大、京工繊大、鹿島建設

図版

天井ファンでの飛沫シミュレーションと感染リスク低減効果
(鹿島×シンガポール国立大学 共同研究)

ショッピングモールでのイベント「タツノオトシゴ救出大作戦」に
当社葉山水域環境実験場がアマモ展示などの協力をしました

8月の夏休み期間中に、神奈川県藤沢市にあるショッピングモール「テラスモール湘南」で「タツノオトシゴ救出大作戦」というイベントが行われ、当社技術研究所の葉山水域環境実験場が、アマモの飼育展示や種子の観察といった環境啓発プログラムにて協力しました。

このイベントは、株式会社イノカが、来場した家族連れを対象に海の自然環境を学ぶ場として企画したものです。スマートフォンを使ったクイズ形式でのアマモの種子選別や、アマモに寄り添うタツノオトシゴの観察など、イノカが保有するITを中心とした技術と葉山水域環境実験場のノウハウを駆使した海の環境を身近に感じながら学ぶ工夫により、喜んで参加する親子連れの姿が見られました。

葉山水域環境実験場では、アマモ種子の発芽促進や海域でのアマモ場生育技術を保有しており、継続的に研究を行っています。これまでも地元小学校での環境教育や地域社会とのコミュニケーション活動を実施してきましたが、今後も環境再生や地域貢献にさらに積極的に取り組んでまいります。

図版:タツノオトシゴとアマモ水槽

タツノオトシゴとアマモ水槽

図版:親子連れの参加者

親子連れの参加者

図版:数種の植物の種からアマモの種を見つけるコーナー

数種の植物の種からアマモの種を見つけるコーナー

図版:アマモに寄り添うタツノオトシゴ

アマモに寄り添うタツノオトシゴ

Rochaメダル受賞
~岩盤力学分野 若手最優秀賞・日本人では三人目~

KaTRIS(鹿島技術研究所 シンガポールオフィス)の横田泰宏主任研究員が、国際岩の力学会より、2021年のRocha(ロシャ)メダルの受賞者に選定されました。

Rochaメダルは岩盤力学分野で卓越した博士論文に対し、国際岩の力学会より毎年1名の研究者に授与されるもので、国際的に権威の高い賞の1つです。今回の受賞は、日本人では三人目、またシンガポールの大学からは初の選出という名誉ある受賞となりました。

受賞論文「Experimental and computational study on rock bolt modelling and its application on a new type of energy-absorbing rock bolt」は、室内試験と高度な数値解析技術を駆使してロックボルト(地下空間構築に不可欠なサポート部材)の詳細な数値モデリングを構築することで、新しいロックボルトの開発に寄与するものです。

横田主任研究員は、2016年より社内の留学制度を活用して、シンガポールナンヤン工科大学(Nanyang Technological University)にて地下空間構築技術に関する研究に従事し、鹿島技術研究所とナンヤン工科大学の共同研究に発展しました。

近年の海外土木事業部門やKaTRISの国際学会における積極的活動が、社会実装可能な技術の重要性を高め、世界的な受賞へと繋がりました。

メダルの授与式は2021年9月、イタリア・トリノで開催される 国際会議EUROCK2021にて行われる予定です。

図版

横田泰宏 主任研究員

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