自然とともにある校舎を目指して
「ZEB」がもたらす新しい学校の価値
持続可能な社会の実現に向け、学校建築のあり方が大きく変わろうとしています。その中核を担うのが「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」です。ZEBとは、建物で消費するエネルギーを、徹底した「省エネ」と太陽光発電などの「創エネ」によって相殺し、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した建物です。学校施設におけるZEB化は、カーボンニュートラルへの貢献はもちろん、教材としての環境教育価値の向上、さらには災害時のエネルギー自立など、学び舎の未来を支える強力な基盤となります。
幅広い建築物でのZEBの実現と普及を促進するために、エネルギー消費量が正味0%以下となる「Net ZEB」のみに焦点を定めるのではなく、段階的な評価を行う「ZEBシリーズ」としてZEBの定義が拡充されています。近年でも、件数は少なくてもエネルギー消費量における影響が大きい大規模建築物に対して「ZEB Oriented」の定義が追加されています。
(経済産業省資源エネルギー庁「平成30年度ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」2019年3月をもとに作成)
※1 事務所等、学校等、工場等は40%以上、ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30%以上の一次エネルギー消費量の削減
※2 公益社団法人空気調和・衛生工学会において省エネルギー効果が高いと見込まれるが、現行の評価プログラムでは評価ができていない以下の技術
①CO2濃度による外気量制御/②自然換気システム/③空調ポンプ制御の高度化(VWV、適正容量分割、末端差圧制御、送水圧力設定制御等)/④空調ファン制御の高度化(VAV、適正容量分割等)/⑤冷却塔ファン・インバータ制御/⑥照明のゾーニング制御/⑦フリークーリング/⑧デシカント空調システム/⑨クール・ヒートトレンチシステムなど
※3 非住宅部分の延べ面積が10,000m2以上
これらのZEB性能は第三者機関が評価する「ZEB認証」という証明を取得することが可能です。客観的な認証を取得することは、学校の環境に対する姿勢を対外的にアピールする強力な指標となります。
建物の特性や予算に合わせた鹿島のZEB化の提案の一部をご紹介いたします。
芝浦工業大学大宮キャンパス 創発棟 Nearly ZEBの達成を目指して
埼玉県さいたま市に立地する芝浦工業大学大宮キャンパスは2022年に全国初となる脱炭素先行地域(環境省)として選定されており、2025年に完成した9号館創発棟では、外皮性能の向上、適切なエネルギー管理、高効率機器の導入、未利用エネルギーの活用といった最先端の技術を用いてZEB Ready(一般的な建物が消費するエネルギーに対して50%削減)を達成しています。また、経済産業省によるZEB実証事業(ZEB補助金)に採択されており、設計費、設備費(機器、BEMS)、工事費の一部に対して補助金を受領しています。更に環境省の地域脱炭素推進交付金も採択予定でこの交付金により太陽光パネルを設置予定であり、それによりNearly ZEB(一般的な建物が消費するエネルギーに対して75%削減)を達成する見込みです。
高効率機器の具体的取り組みとして高効率熱源設備、高効率EHPを採用、設備システムとしてCO2濃度による外気量制御、空調ポンプ制御の高度化、照明のゾーニング制御などを導入、未利用エネルギー活用としてコジェネ排熱をデシカント外調機・空調・給湯へ活用することにより消費エネルギーを最小限に抑えています。また、中央監視システムによって照明や空調など各負荷単位での消費電力を計測し、エネルギー消費量を可視化しています。
2階~6階のラウンジには放射冷暖房パネルを導入し、空調条件の緩和による省エネや対流空調との併用による多様な温熱環境の創出、教育の場に「魅せる」形で導入することで学習教材としての役割も担っています。
2階ラウンジ 放射冷暖房パネル
4階屋上 デシカント外調機
自然エネルギーの活用の具体的取り組みとして、水熱源ヒートポンプを採用しています。年間を通じて温度が安定している井水を処理し、熱源として利用することで、効率的な運転が可能となり省エネを実現しています。また、南側立面、屋上に太陽光発電パネルを設置することで創エネも実現し、将来的には体育館屋上にも太陽光発電パネルを追加設置することでNearly ZEB(一般的な建物が消費するエネルギーに対して75%削減)を達成する見込みです。
立面・屋上に太陽光発電パネルが設置された外観
立面・屋上に太陽光パネルが設置された外観
その他のZEB認証取得実績
千葉商科大学付属高校
-ZEB Ready(エネルギー消費量52%削減)
東京農業大学 国際センター
-ZEB Ready(エネルギー消費量57%削減)
麗澤大学 校舎さつき
-ZEB Ready(エネルギー消費量58%削減)
自然エネルギーの有効な利活用
ZEBスクールの実現には、自然エネルギーの活用が重要な要素となります。
鹿島は、立地や計画に即した最適な省エネ技術や考え方を提供し、学校の省エネルギー戦略をお手伝いします。
立命館中学校・高等学校長岡京新キャンパス
立命館大学長岡京中学・高校新キャンパス(京都府京都市)は、「地域性を活かした計画」、「自然エネルギー利用」、「ピークカットに寄与する電力デマンド低減」、「災害時の地域貢献と省エネの両立」、「学校活動と連携した環境への取組み」という5つの大きな柱を軸として整備された、最先端のエコキャンパスです。
「自然エネルギー利用」の具体的取組みとしては、キャンパスの中心となるアトリウム空間をエコスクールの象徴として位置付け、季節に応じた各種自然エネルギーの活用と建築対策の組み合わせにより、年間エネルギー収支をゼロにする「ゼロエネルギーアトリウム」を目指しました。
ここでは、当社が開発した再生可能エネルギー利用の高効率ヒートポンプシステムであるReHP®(Renewable energy Heat Pump:リヒープ)が採用され、空調に利用されています。
同キャンパスの取り組みは、国土交通省の平成24年度住宅・建築物省CO2推進モデル事業に選定されました。
外側西面
2階センターアトリウム
再生可能エネルギー利用高効率ヒートポンプシステム「ReHP®」
ReHP®(リヒープ)は、建物周囲の太陽熱(光)、空気熱、地中熱、水熱など複数の再生可能エネルギーを熱源として利用する高効率なヒートポンプシステムであり、従来のヒートポンプ冷暖房機に比べて年間消費電力量の30%以上の削減とCO2排出量の抑制に寄与します。
ReHP®を構成する要素技術として、ソルエアヒートポンプシステム®(太陽熱(光)、放射冷却及び空気熱交換を用いた温冷熱供給用ヒートポンプ)や、新規に開発した地中熱交換器(高密度地中熱交換システム、エコサイトパイル®地中熱交換システム)などがあり、これらを熱媒となる水ループで接続して冷暖房や給湯の熱源に用います。
本システムは、複数の再生可能エネルギーや未利用エネルギーを組み合わせて柔軟にシステムを構築することが可能であり、学校分野への適用も期待されます。
慶應義塾大学日吉第4校舎独立館
慶應義塾大学日吉第4校舎独立館は、創立150年事業の一環として日吉キャンパスに整備されました。
今後100年の使用が想定されている独立館は、日差しを和らげる回廊や自然換気のアトリウムなどの半屋外空間を連ねることで、機械設備だけに頼らないエコスクールを実現しています。
キャンパスと街を緩やかに結ぶ桜並木アプローチ、西日を和らげる大屋根とルーバーのあるアプローチアベニュー、既存の銀杏並木の仕組みを取り込んだ木陰のようなアトリウム。これらの「半屋外」共用空間は、自然換気や自然光など自然エネルギーを効果的に活用すると同時に、9mの敷地高低差を活かした学生の居場所となるコミュニケーションスペースとなっています。
こうした環境に配慮した新しい試みにより、2008年には横浜市が環境に優しい建物を認証する制度(CASBEE横浜認証制度)において最高位「Sランク」の認証を受けました。
2010年BCS賞受賞
BCS賞とは?
一般社団法人日本建設業連合会が、我が国の良好な建築資産の創出を図り、文化の進展と地球環境保全に寄与することを目的に、毎年国内の優秀な建築作品を選定するもの。
アプローチアベニューの半屋外空間
トップライト風力換気とアトリウム温度差換気の仕組み
周辺環境と緩やかに繋がった独立館
多摩美術大学
多摩美術大学八王子キャンパスでは、大学という社会的責任を担う機関として、環境問題への高い意識を持った学生を育成すること、またデータ収集によりNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める新エネルギー開発に貢献できるよう、レクチャーホールにおいて、太陽電池を組み込んだガラスの大屋根で発電し、校舎に供給しています。
省エネルギーに加え、創エネルギーを活用した自給自足によって、ZEBスクールの実現に繋げます。
建材一体型の太陽光発電設備を設置したレクチャーホール
人と地球に優しいZEBスクール インデックス
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