五感を育てる木造・木質化
木のチカラを活かす伝統と革新
我が国では、木材価格の下落などの影響で森林の手入れが十分に行われず、国土保全など森林の多面的機能の低下が懸念される事態となっており、木を使うことで森を育て、林業の再生を図ることが急務となっています。
こうした状況の下、2022年の建築基準法改正(2024年施行)では、木造・木質化に関する耐火規制が大幅に合理化されました。これにより、これまで大規模・高層化が難しかった都市部の校舎においても、耐火性能を確保しながら木材を「現し(あらわし)」で活用できる範囲が広がり、設計の自由度が飛躍的に向上しています。
鹿島は、耐火集成材「FRウッド®」の開発により、都心部などの防火地域でも木造校舎の実現を可能にしました。
木の弱点を克服して良さを活かす技術を実現しています。
FRウッド®で「木が見える」新たな耐火木造建築を実現
従来、木造で耐火建築物を実現するためには、石膏ボードなどの不燃材で木を覆うことにより耐火性能を確保する手法が一般的であり、「木造ではあるが、木は『見えない』」というジレンマがありました。
FRウッド®は、従来の耐火木造技術とは異なり、木を見せた耐火木造建築物を実現する新技術です。国内で最も多いスギを採用し「薬剤注入が容易」というスギの特徴を生かし、難燃薬剤を注入することで耐火性能を確保しています。
FRウッド®の適用により、木が見える新しい建築物を実現することで、環境負荷低減や低炭素社会の実現、森林資源の有効活用、そして国内林業の活性化により貢献したいと考えています。
FRウッド®とは?
Fire Resistant Wood。
FRウッド®は、鹿島の登録商標です。
FRウッド®は、鹿島と東京農工大学、森林総合研究所、ティー・イー・コンサルティングの共同研究から生まれました。
野菜倶楽部 oto no ha Café
木の持つ柔らかさ、香り、色合いなどは、五感を育て、安らぎのある環境をもたらします。
特に教育施設では、木造・木質化が子どもの情緒の安定や集中力の向上、健康増進に寄与するといわれています。そのため、地方では再び木造校舎が増え、都市部でも内装の木質化が進められているほか、鹿島では準耐火の木造建築を実現しています。
西武文庫幼稚園
木材の暖かさ柔らかさに触れられる伸びやかな空間
築40年の既存の幼稚園は、すべての保育室が園庭を取り囲むために開放感と安心感があり、園庭は大きく森に開いていたので、新園舎も原風景を守る配置にしています。
道路に面してエントランスをつくり、園庭へあがるためのスロープの空間をホールとしたことは、ホール越しに園庭や背後の森を感じられ、イメージを一新しています。
構造は、道路レベルをRC造、幼稚園の大部分を占める園庭レベルを木造としています。杉板羽目板の外壁、チークフローリング床、木製サッシュを採用したことで、子供たちは木材のもつ暖かさ柔らかさに触れ、伸びやかな空間を体験することができます。
外観
自然光と書棚によって、移動の空間が子どもたちの部屋になる
麗澤大学 校舎さつき
新構法採用による多様な木造・木質 学修空間の実現
2024年に文理融合総合大学への転換を図り新設された新工学部(情報システム工学・ロボティクス専攻)の校舎棟では、学生たちが集う象徴的な空間へ社会ニーズへの挑戦として、ひとをつなぐ交流の場に鹿島の新構法採用による多様な木造木質 学修空間を実現しました。
アプローチに隣接する2層吹抜けとなる大教室と大型実験室には新技術となる「ボルトレスCLT耐震壁」や、CLT型枠を意匠としてそのまま活用するRCと木構造の新技術となるハイブリット構法「RCLT梁」(新特許取得)を採用しています。
構造架構はCLT耐震壁付RC造ラーメン構造を採用し、新技術となるCLT耐震壁(個別評定)を配置した計画としています。上下のRCとCLTパネルの接合には、ボルトレス化された意匠性と耐力に優れた新しいタイプを用いました。



3方向が外部に開きアクティビティが可視化する大教室では講演会・各種学会発表・シンポジウム・フォーラム・オープンキャンパス・その他地域参加も含めたイベントなど多様に利用されています。
大教室 学生たちのアクティビティが開く木造・木質化空間(中央/ボルトレスCLT耐震壁)
大型実験室屋根を支える梁は、RCとCLT型枠を意匠としてそのまま木質表現を行う新技術ハイブリット新構法「RCLT梁」(特許取得)を採用しています。


大型実験室 新技術ボルトレスCLT耐震壁とハイブリット新構法 RCLT梁(特許取得)
大庇と連続する大教室・大型実験室は、教育研究活動の多様化・変化に柔軟に対応可能な多用途に利用できる空間として利用されています。大きく開かれた開口により内部の賑わいや、やさしい表情を持つ木造・木質化空間が外部へ表出する大空間は、ニーズに合わせて可変する多目的スペースとして、大学主催のフォーラムや学園祭等イベントスペースとしても利用され、研究活動に加えて地域・社会へ開かれた人気の場として活用されています。
巣鴨学園 中学高等学校
伝統を継承し、次なる百年を育む新キャンパス
創立100周年を記念する、都心の伝統校「巣鴨学園」の全面建て替えプロジェクトです。約3年半・全4期にわたる「居ながら建替え」により、1,450人の生徒の学びを止めることなく、歴史ある景観と新たな教育環境を融合させました。
狭小敷地を活かす空間構成
限られた敷地内に校舎を分散配置し、それらを積層するテラスで繋ぐことで、中庭とグラウンドという「学び」と「活動」の場を最大限に確保しました。テラスからはキャンパスの隅々まで視線が届き、生徒の賑わいと風を感じられる一体感のある空間を創出しています。
ギムナシオン(体育館)と3棟の校舎が面するグラウンド
学園の記憶を紡ぐデザイン
外装は旧本館の意匠を参照した力強い縦基調とし、学園の精神を体現。また、道路拡幅のため伐採した150本の既存樹木を内装材として再利用したほか、旧校舎の象徴的な校章や装飾、卒業生の作品を随所に配置しました。
伐採したイチョウを天井材に活用した都市を望むカフェテリア
施工技術による価値向上
精密な工程管理に加え、壁柱の採用により柱型のない使いやすい教室を実現。建物の四隅を開口部とすることで、圧迫感を抑えつつ豊かな緑を取り込んでいます。意匠と技術が高度に融合したこの学び舎は、卒業生の想い出を大切に守りながら、次なる百年を育む拠点として生まれ変わりました。
木々に抱かれて学ぶ教室
京華学園
キャンパス内の既存樹木を活用して学園の記憶に
校舎再編事業にあたり、増改築計画の中でキャンパス内の既存樹木を伐採せざるを得なかったのですが、その樹木を学園の記憶に残す意味で、伐採後の工事期間の中で乾燥期間を確保し製材することでエントランスホールの自動ドアと折り上げ天井の仕上げ材として利活用を行いました。
ケヤキを板状に製材した木材は、その質感を生かすために塗装は施さず素地のままとしています。アクセントの吊り下げ照明とともに女子校の玄関らしさを演出しました。
伐採樹木を仕上げに活用したエントランスホール
芝浦工業大学大宮キャンパス 創発棟
グリーンキャンパス™の記憶を継承する空間
埼玉県さいたま市に位置する芝浦工業大学の新校舎計画です。教室、研究施設、体育館、地域健康増進センター、ラーニングコモンズ、産学官連携コーナー、eスポーツスタジオなどを擁した新たなキャンパスのハブとなる施設を目指しました。
緑があふれる大宮キャンパスはグリーンキャンパス™と呼ばれています。キャンパスの最北部に位置する創発棟の建設地は、ヒノキ、杉、サワラなどが植生する「伝統の森」として、長年学生や教職員の方々から親しまれてきました。
2階と3階にある学生の学びと交流の場であるナレッジストリートに面して、ガラス張りの会議室を計画しました。その会議室の壁の一面に、森に自生していた樹木を加工したオリジナルのストランドボードを採用しています。この樹木は工事のために仕方なく伐採したものですが、創発棟の一部として新たな命が吹き込まれ、グリーンキャンパス™の記憶を継承するアイテムとしての役割を果たしています。
建設前の森に自生していたスギを加工して再活用した壁面仕上げ
既存樹木から作成したストランドボードサンプル
早稲田大学 本庄高等学院95号館
木の温もり、自然光の柔らかさ、音の響きの抑揚に溢れる空間
校舎全体に立体的な奥行と回遊性を創り出す装置として、「交流ラウンジ」を中心にインナーエリアが計画され、教室群を結び付けています。交流ラウンジは、階段状のアトリウム、高さの異なる吹抜け、ブリッジ状のコリドールで構成されており、木の温もり、自然光の柔らかさ、音の響きの抑揚に溢れる空間になっています。
早稲田大学 本庄高等学院95号館
八雲学園中学校・高等学校 メディアセンター(図書館棟)
学園の中で最も落ち着き集中できる木造の図書館
都区内では戦後稀な、木造混構造の校舎です。
学園の図書室は、生徒が学校活動の喧騒から距離を置き、自己を形成していく場であり、学園生活の記憶を重ねていく場でもあります。緑豊かな環境に呼応しつつ、学園の中で最も落ち着き集中できる環境にふさわしいものとして、木造木質空間を選び取りました。木造実現のため、既存建物群と法令上別建物として配置し、準耐火建築物として燃えしろ設計された集成材を用いて構築されました。
図書館内部
燃えしろ設計とは?
集成材の炭化速度を考慮してあらかじめ炭化消失する深さを定め、それを除いた断面で荷重を支持するように設計すること。
北里大学 獣医学部 本館A棟(十和田キャンパス)
厳寒地における暖かな温もり空間
青森県十和田キャンパスの寒冷地に立地する、新研究・実習棟の校舎です。
内部・外部から学生たちのアクティビティが見える位置に配置された「木質化のラウンジ」は、厳寒の地における「暖かな温もりを感じる空間」として、学生たちが集まる賑わいの空間となっています。屋外のデッキテラスでは、地場の家具工場の木廃材を再利用した再生木デッキを利用し、地球に優しいエコキャンパスの実現を図っています。
地場産木を活かし、内外を繋ぎ、木の温もりが染み出るラウンジ空間
屋外のデッキテラス
木造武道館モデル
武道の必修化に対応するため、柔・剣道武道場の整備が進められています。木造の武道場は、伝統的な武道の精神を環境から体感させる力を持っています。鹿島は、耐火木造技術を含む多様な木造技術をシステム化し、敷地条件に合致した武道場の最適解を提案します。平屋モデル、2階モデルなど、様々なバリエーションを用意しています。
関連リンク
木造武道館・モデル内観
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