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Site 2: 災害廃棄物処理業務

廃棄物処理が地域復興の第一歩

地震や大規模な津波により膨大な災害廃棄物が発生,
広範囲に散乱した状態となった。被災地では人命救助やインフラの応急復旧のため,
各地の仮置き場に集積された廃棄物の速やかな撤去・処理が求められた。
災害廃棄物処理業務は,被災地の人々の健康や生活環境の保全,公衆衛生上の観点から,
早期着手・早期完了が重要であり,地域復興の第一歩となる業務だ。

災害復旧工事経験者を中心とした
プロジェクトチームを構成

当時,東日本大震災により発生した災害廃棄物(津波堆積物を除く)は,約2,000万t,津波堆積物は約1億1,000万tにのぼった(2014年3月末現在,環境省資料)。

当社は発災から約半月後,阪神・淡路大震災をはじめ過去の災害復旧工事経験者を中心として構成したプロジェクトチームを立ち上げ,本格復旧に向けた検討を開始,被災状況を把握するため現地調査を行った。その結果,広域に及ぶ被害と膨大ながれき量から災害廃棄物処理の早期着手が急務と判断,国や各県が災害廃棄物への対応方針の策定に取り組むなか,各地の状況に対応した技術の洗い出しや処理方法の検討にいち早く着手した。

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三陸での処理業務

東日本大震災では建物の損壊などで発生した廃棄物,いわゆる「がれき」と呼ばれるもののほかに,津波によって土砂や汚泥状の津波堆積物が大量に発生した。仮置き場に集められたそれらの災害廃棄物は,選別・焼却・破砕・洗浄処理などを行うための専用の施設を擁する中間処理施設に運搬される。中間処理施設では減量化を目的に,できる限り再資源化・再生利用する方針で処理が行われる。

当社は岩手県と宮城県における災害廃棄物処理業務として,宮古,石巻,宮城東部の3地区を担当した。

石巻ブロックは約68haの敷地に1日あたり1,500tの焼却能力を持つ焼却炉などの中間処理施設を設け,300万tを超える災害廃棄物を約2年で処理した。中間処理施設としては国内最大規模となった。

図版:重機によって粗選別を行う(石巻ブロック粗選別ヤード)

重機によって粗選別を行う
(石巻ブロック粗選別ヤード)

図版:混合廃棄物は重機による粗粗選別・粗選別の後,人の目と手によって選別された(宮古地区)

混合廃棄物は重機による粗粗選別・粗選別の後,人の目と手によって選別された
(宮古地区)

当社が担当した岩手県・宮城県の
災害廃棄物処理業務と
その業務範囲

図版:地図
  • ①宮古地区災害廃棄物破砕・選別処理業務
    業務対象区域:岩手県宮古市,岩泉町,田野畑村
    処理量:廃棄物88万t
    工期:2011年12月~2014年6月
    災害廃棄物の選別・破砕・運搬を行う
  • ②災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)
    業務対象区域:宮城県石巻市,東松島市,女川町
    処理量:廃棄物232万t 津波堆積物71万t
    工期:2011年9月~2014年9月
    災害廃棄物を,2次仮置き場で破砕・選別・焼却などの中間処理を行った後,有価売却を含むリサイクル・最終処分を行う
  • ③災害廃棄物処理業務(宮城東部ブロック)
    業務対象区域:宮城県塩竈市,多賀城市,七ヶ浜町
    処理量:廃棄物33万t
    工期:2011年11月~2014年3月
    災害廃棄物を2次仮置き場などで,分別・破砕・選別・焼却の中間処理を行った後に,リサイクル・最終処分を行う

福島県での放射性物質を含む廃棄物処理

福島県では地震と津波による被害に加え,東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って放出された放射性物質により膨大な量の汚染廃棄物が発生。復興の大きな足かせとなった。国は「放射性物質汚染対処特措法」(2012年1月施行)に基づき汚染廃棄物対策地域を指定。地域内にある廃棄物の収集・運搬・保管および処分を直轄し,各市町村に仮設焼却炉を設置する方針とした。

当社は,MHIEC※1・鹿島・MHI※2共同企業体として,汚染廃棄物対策地域に指定された富岡町における仮設の廃棄物処理施設の建設,運営,解体撤去に関する業務を担当。放射性物質を含む廃棄物を焼却処理することで容積を低減することを目指した。周辺環境や作業員への放射線の影響を最小限にするため,さまざまな工夫を行い,厳重な管理のもと業務を進めた。

廃棄物処理業務の技術やノウハウは石巻から富岡へとさらに進化し,その後大熊へと受け継がれ今も作業が進められている。

※1 MHIEC:三菱重工環境・化学エンジニアリング ※2 MHI:三菱重工業

災害廃棄物処理業務

(石巻ブロック)

県内最大量の災害廃棄物を扱う「石巻ブロック」は,石巻港の隣接地に中間処理施設を設計・施工で整備,廃棄物処理業務の運営管理・処理完了後の施設解体までの一括業務となった。廃棄物の選別・焼却・処理・資源化を行うための破砕選別処理施設,土壌洗浄施設,焼却施設などの整備工事を進め,着工から約1年で中間処理施設を本格稼働させた。約3年間で延べ42万5,000人もの作業員が従事した。
[工期:2011年9月~2014年9月]

図版:粗選別ヤードではがれきをライン上に展開,重機と人の手で選別した

粗選別ヤードではがれきをライン上に展開,重機と人の手で選別した

図版:国内最大規模となった中間処理施設全景(2013年5月)

国内最大規模となった中間処理施設全景(2013年5月)

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富岡町対策地域内廃棄物処理業務

(破砕選別,減容化処理)

廃棄物のなかには放射性物質が含まれることから,施設内部を放射線管理区域に設定して車両・作業員とも二重扉からの出入り,また粉じんや放射性物質が外部に流出しないよう建屋内部を負圧に保つなどさまざまな対策が取られた。津波がれき,家屋解体廃材,片付けごみ,除染廃棄物の処理量は,破砕選別施設で約19.8万t(約3年9ヵ月間),焼却施設で約16万t(約3年6ヵ月間)。その後,施設の解体を行い,2019年10月に業務を完了した。
[工期:2014年3月~2019年10月]

図版:破砕選別施設内部

破砕選別施設内部

図版:焼却施設全景

焼却施設全景

あのときを振り返って

廃棄物処理の難しさは
「量」と「質」の2面

図版:佐々木正充 所長

女川統括工事事務所
佐々木正充 所長
(当時・災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)所長)

「量」の面では正確な廃棄物数量がわからないため仮置き場の測量などから厳密に数量を予測し工程を管理する必要があること,「質」の面では廃棄物の性状により処理技術を柔軟に変えていく必要があることなどが災害廃棄物処理業務の難しいところです。今でも集積所の近くを通るとがれきの山だった記憶がよみがえりますが,本業務では発注者との信頼関係,地域との協調,本社・支店からの支援,当社社員・協力会社との結束が強かったことに助けられました。

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技術Column

「スマートG-Safe®を活用し,
安全かつ渋滞発生の抑制に努めた陸上運搬を実現

災害廃棄物処理業務では廃棄物を運搬する工事車両に車両運行管理システム「スマートG-Safe」の端末を搭載。主要地点の交通状況や車両の位置を現場事務所内の運行管理室でリアルタイムに把握し,交通渋滞や交通規制に応じて運搬ルートや積込み場の変更などをドライバーに指示する。ドライバーと運行管理室で情報を共有することで,運搬ルートの渋滞緩和に貢献し,安全・確実な運搬を可能にした。スマートG-Safeはその後,中間貯蔵施設への厳格な輸送管理にも用いられており,機能強化を続けながら現在も多くの現場を下支えしている。

図版:運行管理室

運行管理室

図版:「スマートG-Safe」の車載端末

「スマートG-Safe」の車載端末

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