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発掘!旬の社員

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互いにリスペクト
探究し実践化を目指す2人

研究者の新たな道をつくり受け継がれていくバトン
集合写真
横田泰宏(左)

よこた・やすひろ/兵庫県出身/
自然科学研究科建設学専攻

技術研究所海外展開グループ(シンガポールオフィス 主任研究員)

2006年に入社し技術研究所岩盤・地下施設グループに配属。トンネルなどの地下空間構築技術に関連した研究を中心に現場を支援。室内および現場実験,数値解析を活用した新しい支保部材や補強部材,地盤分野向けの新しい地質調査・センシング技術を開発してきた。2013年に北海道支店の北の峰トンネルにて掘削や補強の技術検討を担当。2015年技術研究所に戻った後,社内留学制度を活用しシンガポールのナンヤン工科大学博士課程を修了。2021年岩盤力学分野のRochaメダルを受賞した。最近は3次元データの作成や衛星を中心とした宇宙分野,GIS(地理情報システム)に関心があり,時間を見つけては情報収集をしている。

有坂壮平(右)

ありさか・そうへい/埼玉県出身/
理工学研究科基礎理工学専攻

シンガポール国立大学留学(人事部付)

2015年入社。ITソリューション部生産システムグループ・システム管理グループに配属され,原子力施設工事で利用する放射線管理システムなど業務システム開発に携わる。2016年に同部情報基盤グループで全社システム基盤のクラウド移行プロジェクトなど全社の情報インフラに関する業務や,AIによる建築パース図の自動生成などAIの建設業への応用に関する調査研究を担当。2017年4月から技術研究所建築解析グループを経てAI×ICTラボでAIによる数値解析の高速化,AI技術を用いたコンクリートの品質の画像診断など,AIの建設業への応用に関する研究開発を行う。趣味は音楽でドラム・ギター・ピアノなど複数の楽器を奏でる。

#研究者 #感謝 #Rocha(ロシャ)

「自分ひとりでできたことなんて,会社生活のなかで一つもなかったと思います」。そう謙虚に語るのは,2021年のRocha(ロシャ)メダルを受賞した技術研究所シンガポールオフィスの横田泰宏主任研究員。Rochaメダルは岩盤力学分野で卓越した博士論文に対し,国際岩の力学会から毎年1人の研究者に授与される国際的に権威の高い賞で,日本人では3人目となる。受賞論文は室内試験と高度な数値解析技術を駆使し,ロックボルトの詳細な数値モデリングを構築する内容で,新しいロックボルトの開発や製作に寄与する。

入社時から技術研究所で,地盤分野を主とした新しい補強部材やセンシング技術の開発に携わってきた。現場経験などを経て,社内留学制度でシンガポールのナンヤン工科大学の修士課程に入学。当初2年の留学を予定していたが,指導教官の強い勧めと,研究を更に深めたい自身の想いから,特例で1年の留学延長を認めてもらい博士課程に挑んだ。「3年という期間が研究内容を深化させてくれました。当時では異例の機会を与えてくれた人事部や技術研究所,留学準備でお世話になった北の峰トンネルの現場など社内外すべての関係者や家族に感謝しなければなりません」と深く感謝の意をあらわす。

現在は,留学時の研究テーマをさらに拡げ,新しい支保工の開発やその効果を検証。国内外のスタートアップや研究機関と先端技術を活かしたR&Dも行っているほか,グローバル/ローカルニーズに基づいたR&Dや鹿島保有技術の海外展開を推進している。また,国際的な学協会での交流を通じて最新の研究との繋がりを深めるなど,ネットワークの拡充にも力を入れている。「自分の研究が,最先端の研究機関とコラボレーションし,当社のグローバル化に貢献することや,国内での研究活動や技術提案に活かされなければならないと考えています」と研究の実践化へ想いを語ってくれた。

プライベート写真

iPhoneなどによる3次元データを作成することにはまっている横田さん。地元客で賑わうマーライオンパークの大きなマーライオンの裏手に立つ,小さなマーライオンをご存知でしょうか。2m程度で写真撮影にはちょうど良いサイズです。ヘリテージや身の回りの物などを3次元化しながら,自身の研究にも活かせたら楽しいだろうなと日々考えています。

最先端AIを建設業に

現在,人事部付でシンガポール国立大学に博士課程学生として留学中の有坂壮平さんは,AI技術と数値シミュレーション技術の融合に関する研究を行っている。

学生時代はAI関係の研究をしていたわけではないが,入社後に「仕事にも役立つ新しいことに挑戦したい」と思い立ち,ITソリューション部の若手有志でトレンドに沿ったAI勉強会を始めたのがきっかけだ。AIはデータからその背後にある規則を抽出し,予測・判断を行う帰納的なアプローチで,数値シミュレーションは物理法則や現象の理解からモデル化を行い,計算を積み重ねて推論する演繹的なアプローチ。この相補的な関係にある両者を組み合わせることで相乗効果が生まれて革新的な技術が実現されつつあるという。「たとえば,計算負荷の高いシミュレーションの一部をAIで代替することで,数千倍から数万倍の高速化が図れ,設計と同時にシミュレーションを行うことが可能となります」。

建設業と異分野であるAI。取り入れてもらうためには,適用する分野の専門家との相互の理解が大切である。「最初はお互いの専門分野における常識や慣習,問題意識を共有することが重要です。これらの暗黙知を意識して共同研究のメンバーから学び,自分からも伝えるようにしています」。博士号取得後は留学で得たAIと数値シミュレーションの融合技術にさらに磨きをかけ,鹿島が保有する技術と組み合わせることで,設計や施工の高度化・生産性向上を図りたいと考えている。「建設業におけるAI活用の最先端を切り拓きたいです。留学で得たネットワークを活用して国内外のAI専門家と建設業を繋ぐ異分野間のハブ,翻訳者と呼ばれる存在を目指します」と力強く目標を掲げてくれた。

改ページ

プライベート写真

音楽が大好きな有坂さん。友人の結婚式の余興では,ギターでDEPAPEPEの「START」を演奏し,2人の門出を祝いました。最近,“ハンドパン”という楽器を注文し,現在製作中。幻想的な音色が心地よく響く打楽器です。コロナが落ち着いたらシンガポールでも仲間を集めてバンドやライブ活動を再開したいと思っています。

繋がっていく研究者

「今,博士課程の留学ができているのは横田さんのおかげです。熱意を保って留学の3年で成果を残し,かつ権威ある賞を受賞されたことが,今回,私の博士課程での留学に繋がっているのだと思います」と有坂さんは横田さんに尊敬の念を示す。横田さんも「有坂さんの専門としている分野は大変興味がある内容で,留学中の今からでも協働したいと思うくらいです」と語る。留学制度が異分野の交流へと繋がった。互いをリスペクトする関係性がつくる建設×ICTの新技術創出に期待が高まる。

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