トンネル内外シームレス位置検知システム
トンネル内外に関わらず現場全体の車両運行を見える化し一元管理
トンネル工事では、複数の大型車両が坑内で稼動しており、安全の観点からクラクションを使った状況伝達など様々な対策がとられています。このような環境でお互いの位置関係を把握することは重要ですが、非GNSS環境下において、互いの位置関係を精度よくリアルタイムで把握する技術は確立できていませんでした。
本システムは、工事車両が坑内外どちらを走行しているのか自動判定し、GNSS(グローバル衛星測位システム)電波の届かない坑内においても、車両の相互位置や走行方向を正確かつリアルタイムに検知できるものです。あわせて、正確な車両の位置を見える化し現場事務所で一元管理することで、狭隘な坑内で限られた車両のすれ違い箇所を効果的に活用することや、リアルタイムな工事の進捗管理が可能となり、安全性と生産性の大幅な向上を実現するとともに働き方改革にも大きく貢献します。

現場での適用状況

現場事務所での車両位置モニタリング状況
- キーワード
- トンネル、屋内測位、位置検知、Wi-Fi、ビーコン、運行管理、見える化、働き方改革
本システムの概要
本システムは、タブレット端末を利用し、坑内外を走行する全ての車両の位置をシームレスに把握し、一元管理します。坑外では、既存のタブレット端末を使った車両運行管理システム「スマートG-Safe®」の一部機能を活用してGNSSで測位する一方、坑内では、今回開発したWi-Fiとビーコン(発信機)の電波強度をハイブリッドに組み合わせた測位アルゴリズムを適用し、最大時速30kmに達する車両を正確かつリアルタイムに測位します。現在のトンネル工事では、坑内にデータ・音声通信用のWi-Fiアクセスポイントを設置することが標準となっているため、測位用に新たにアンテナを設置する必要はありません。また、坑内外走行の判定は車両に搭載するタブレット端末が自動的に行うため、システム切替え操作などは必要なく、ドライバーは運転に集中できます。

坑内外シームレス位置検知のイメージ
特長・メリットココがポイント
坑内の安全性向上
坑内でドライバーが見るタブレット端末画面は、トンネル内部の構造をデフォルメ表示し、すれ違い箇所や交差部を判別しやすくしています。加えて、入坑中の全車両の位置・種類・走行方向を表示するため、坑内の状況を正確に把握できます。また、タブレット端末を利用してドライバーと現場管理者との双方向の通信も可能です。さらに、坑内での緊急時に、現場管理者から全ドライバーに発信する「緊急時一斉メッセージ」や、ドライバーから現場管理者と全ドライバーに発信する「緊急ボタン」の機能を備えています。

坑内でのドライバー画面
車両の運搬延べ台数に応じた工事の進捗管理
本システムは、車種毎の切羽への到達回数を自動カウントできるため、トンネル掘削の進捗状況のリアルタイムかつ正確な把握が可能です。例えば、「あとダンプトラック2台でずり出しが完了」、「吹付け完了にはまだ4台のアジテータ車が必要」、といった情報を関係者間で共有できるため、よりタイムリーに次の行動に繋げることが可能となります。

切羽到達回数をカウントし、トンネル掘削の進捗状況をリアルタイムに把握(ダンプトラック:ズリ出し、アジテータ車:吹付け)
本システムの効果
坑内における車両の相互位置ならびに他車の種類・走行方向の正確かつリアルタイムな把握が可能なことから、坑口から坑内、坑内の交差部への進入可否などが判断しやすくなるとともに、限られた車両のすれ違い箇所を効率的に利用できるため、坑内での走行がスムーズになります。これにより、トンネル掘削の1サイクルタイムあたりの車両の待機時間が10%程度削減され、工事全体における生産性の大幅な向上を実現します。さらに、何ら操作することなく坑内外をシームレスに測位できるため、ドライバーの負担が軽減され、安全性が向上します。
適用実績

平成29-32年度 日下川新規放水路工事
場所:高知県高岡郡
工期:2018年1月~2021年3月
発注者:国土交通省四国地方整備局
諸元:NATM トンネル延長2,850m 幅員7.0m 掘削断面積55m2
学会論文発表実績
- 「トンネル内外における車両位置検知システムの開発」,土木学会,第75回年次学術講演会,2020年9月
- 「トンネル内外における車両位置検知システムの開発」,土木情報学シンポジウム,2020年9月
- 「坑内外を走る車両位置を一元管理」,日経コンストラクション,2020.7.27号