技術最前線

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環境DNAを用いた
ホタルのモニタリング

大野 貴子
地球環境・バイオグループ

1リットルの水から
ホタルの生息状況を調査

ホタルは里山に生息する自然の豊かさを象徴する生き物として、古くから人々に親しまれています。そのため、日本全国でホタルの生息する水辺の保全は重要視されており、鹿島でもホタル生息地の保全や「ホタルビオトープ」の建設を行っています。ホタルは幼虫期を水中、さなぎは土中、成虫期は水辺空間と多様な環境で一生を過ごします。特に水中で過ごす幼虫の期間は約40週間と生活史のほとんどを占めるため、この時期の状況を把握することが重要ですが、幼虫は0.5~2.5㎝と小さく石の隙間や草の根元等に隠れているため、見つけることが困難です。

この問題を解決するのが「環境DNAを用いたホタルのモニタリング技術」です。環境DNAとは、生物が自ら生息環境中に放出したDNAであり、これを分析することで生物の在・不在や生物量を推定できます。この技術は生態学の分野で魚類を中心に研究が盛んに行われ、モニタリングへの活用が始まっています。一方、ホタルを含む水生昆虫は、環境中に放出するDNA量が少なく検出が困難であるため、研究事例がまだ少ないのが現状です。そこで、ホタルのDNAのみを効率的に増幅できるPCRプライマー(ホタルのDNAを判別する目印の働きをするDNA)を開発し、ホタルのDNAを高感度に検出できる方法を開発しました。開発したプライマーを用いてホタルのDNAの検出を試みた結果、幼虫の脱皮殻や糞のみならず、個体数や浸漬時間を変えた飼育水からもホタル由来のDNAが検出できました。この結果を踏まえ、ホタル生息地にてモニタリングに適用したところ、ホタルの生息状況と対応したDNA検出結果が得られ、技術の有効性が確認できました。

今後はモニタリングを継続することでデータを拡充し、さらに高感度かつ迅速に分析を行える手法へと進化させていくとともに、ホタルをはじめとした生き物がより快適に生息できる生息場の保全に貢献する技術開発を進めていきます。

ここがポイント!

図版:採集困難なホタルの幼虫

採集困難なホタルの幼虫
ホタルの幼虫は小さく、モニタリング調査を行ってもなかなか見つけることができない

図版:環境DNAを用いてホタルの生息状況を把握

環境DNAを用いてホタルの生息状況を把握
ホタルの生活史の中で最も長い幼虫の時期に、生息状況を把握することができる

紹介映像

最終処分場 エコアくまもと

地域の生態系を守り育てるホタルビオトープ

ホタルビオトープ

ホタルビオトープによる里山環境の復元

適用が期待される分野

  • 最終処分場
  • ダム・トンネル
  • リゾート開発

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