技術最前線
有機性廃棄物
(バイオマス)の
エネルギー化技術


地球環境・バイオグループ
循環型社会の形成のためのツール
近年、地球温暖化防止に向けた低炭素社会の実現や、循環型社会など持続可能な社会の形成が急務となっています。有機性廃棄物などのバイオマスは含水率が高いため、メタン発酵による減量化、バイオガスとしてのエネルギー回収が適していますが、処理に20から30日程度の期間が必要であり、減量化率も低いといった課題があります。
鹿島では、この課題に1990年代から取り組み、高効率に分解できるメタン発酵技術の開発を行ってきました。様々な試行錯誤を繰り返し、鹿島独自の高温固定床式メタン発酵システム「メタクレス」が完成しました。「メタクレス」は、分解率の高い高温メタン菌群を利用し、処理期間を短縮するために微生物の住処となる固定床を充填したシステムです。これらにより、短期間で固形物を含む有機物を高効率に分解し、残渣の極少化を可能としました。
「メタクレス」は、食品廃棄物や生ごみなどを対象に、国内約15か所で実機が稼働しています。中でも、霧島酒造株式会社の焼酎粕のリサイクル施設に導入されている「メタクレス」は、食品系廃棄物リサイクル施設として国内最大級です。1日に1,200トンの焼酎粕を処理することで産廃量を2割まで減量し、回収した48,000m3のバイオガス(メタン濃度:約60%)を、焼酎製造工場で蒸留などに使用する燃料としてリサイクルしています。また、余剰のバイオガスで発電し、一般家庭約1,000世帯分に相当する電力を九州電力に売電しています。
鹿島では、廃棄物処理データベース、実験設備を整備しており、適用先ごとに異なる有機性廃棄物、廃水に対し、最適なシステムを提供できる体制を構築しています。また、客先のニーズに対応するための技術開発を継続して行い、常に「メタクレス」を進化させています。近年急増しているESG投資、SDGsなどの環境関連の課題解決のツールとして貢献すべく、国内外での適用拡大を進めていきます。
ここがポイント!

メタクレス
日本最大級の食品廃棄物リサイクル施設が霧島酒造株式会社で稼働中である。

メタクレス実験設備
設計のためのデータを収集し、適用先ごとに最適なシステムを提案する。
適用が期待される分野
- 食品工場
- 自治体(生ごみ)
- リサイクル事業