技術最前線

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動画像分析を活用した
コンクリートの
全量受入れ管理システム

松本 修治
土木材料グループ

品質確保に役立つ
施工管理の自動化技術

「動画像分析を活用したコンクリートの全量受入れ管理システム」は、アジテータ車のシュートを流れるコンクリートの勾配を動画像分析により取得し、そこから算出する新しい指標からスランプをリアルタイムで推定、施工性の悪い(いわゆる ”硬い”)コンクリートを自動的に排除するものです。

通常、コンクリートの受入れ検査は、20~150m3に1回の頻度の「抜き取り検査」として行われています。そのため、検査の対象ではないコンクリートのスランプが小さく硬いことを見逃して打ち込んでしまった場合は、配管の閉塞や充塡不良などのトラブルを引き起こし、結果として構造物の品質を著しく低下させてしまいます。

そこで、本システムの開発では、スランプの小さい硬いコンクリートを自動で識別することから着手しました。はじめに、熟練技術者がシュートを流下するコンクリートのどのような動きを見てスランプを精度よく推定しているのかを、人間の眼球の動きを捉え、視点を算出するアイトラッキング装置を用いて見える化しました。その結果、コンクリートの硬さはシュートを流れるコンクリートの勾配で推定されており、硬いものほど層が厚く、緩やかに流下することを明らかにし、その特徴を動画像分析で捉える方法の考案に至ったものです。

本システムはビデオカメラと性状を判定するPC及びパトランプから構成されます。本システムにより、現場に監視員を配置しなくても、搬入されるコンクリートの全量について、受入れ管理・検査が可能となります。さらに動画像データを転送することで、執務室での監視管理、遠隔臨場によるコンクリートの受入れ検査が可能となり、構造物の品質を確保した省人・省力化も実現できます。

鹿島では、確実な施工管理を行ってきた熟練技術者の五感に替わるICT・センシング技術を用いて取得したデータを分析し、これらを施工管理のPDCAスパイラルに適用することで、品質を確保しつつ、省人・省力化による生産性向上を可能とする取り組みを鋭意進めています。

ここがポイント!

本システムは、動画像撮影のための市販のビデオカメラ、警告を発信するパトランプおよび分析システムを搭載したパソコンから構成される(左図)。
ビデオカメラにアジテータ車のシュートが映し出されるとAIがシュートの位置と判定対象とする範囲(右図の緑枠)を自動認識する。荷卸し開始後、コンクリートがシュートを流下する状態から、硬いコンクリートを検知し、パトランプで警告を発する。

図版:本システムの構成

本システムの構成
本システムは、アジテータ車のシュートを撮影する市販のビデオカメラ、警告を発信するパトランプおよび分析システムを搭載したパソコンで構成される。

図版:本システムの判定指標

本システムの判定指標
アジテータ車のシュートの位置と判定対象とする範囲(緑枠)を動画像からAIが自動認識する。荷卸し開始後、硬いコンクリートの特徴を動画像分析でコンクリートの勾配として捉え、スランプを推定している。

適用が期待される分野

  • コンクリート構造物を建設する全分野

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