技術最前線

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(うつく)シール®工法

渡邉 賢三
土木材料グループ

100年をつくるコンクリート

「三つ子の魂百まで」このことわざは、コンクリートにも同じことが言えます。一般にコンクリートを打ち込んでから約1週間後に型枠を取り外しますが、この型枠を取り外した瞬間からコンクリートの表面から水分は飛んでいきます。生まれたてのコンクリートにとって乾燥は禁物で、乾燥によってコンクリートの水和反応が進まなくなり、ひび割れが入るなどして長期耐久性に劣る構造物となってしまうと、その耐久性を改善するのに多大な労力を要します。逆に、型枠を取り外した瞬間からシートなどで水分を閉じ込め、生まれたてのコンクリートを入念に養生すると、百年を超える長い寿命を有するコンクリート構造物になります。

「三つ子の魂百まで」をコンクリート技術として実用化するために、多様なアプローチがありますが、その一つとして養生に注目しました。コンクリートと接触する型枠内面に予め専用シートを貼り付けてコンクリートを打込み、型枠を取り外す際に専用シートをコンクリート表面に残置する技術を開発しました。この専用シートには、水分を閉じ込める性能が高く、耐紫外線にも優れ、温度変化による長さ変化の小さい材料を選定しました。また、専用シートの撥水性を高めることでコンクリートの表面気泡が著しく減り、美しくなることを発見しました。さらに、専用シートを施工条件の許す限り長期に残置して水分の蒸発を長期に防止する養生を行うことで、コンクリート表面が緻密になり、塩分などの劣化因子が浸透する速度を低減し、長寿命を実現できることを明らかにしました。なお、この専用シートの改良、シートを残置する技術の実現までに3年、改善にはさらに3年を要しました。

開発した技術の特長の一つである美観向上を基に本養生技術を「美シール工法」と命名し、コンクリート構造物の耐久性向上を目的としてこれまでに20以上の現場、約15,000m2に適用しています(2020年現在)。今後は、コンクリート構造物の品質向上に加え、生産性の向上の双方が求められる現場への適用拡大を図っていきます。

ここがポイント!

図版:美シール工法の概要

美シール工法の概要
型枠に予め専用シートを貼り付けてコンクリートを打込み、型枠を取り外す際に専用シートがコンクリート表面に残置して養生できる。

図版:美シール工法を適用し専用シートを剥がした直後のコンクリート

美シール工法を適用し
専用シートを剥がした直後のコンクリート

表面気泡が少なく、密実なコンクリート。表面のつやは徐々に普通コンクリートと同じ状態になっていく。

適用が期待される分野

  • シールド内部構築物
  • 海洋構造物
  • プレキャスト

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