光ファイバでの通信・給電による
地下水水質モニタリング技術
光ファイバを用いて長距離の通信・給電を実現し、
遠隔地での地下水の水質を安定的に計測
放射性廃棄物の地層処分では、地下深部に建設される坑道周辺の地下水の状態を、長期間安定的にモニタリングすることが求められます。一般的な水質センサは電気で駆動するため、数100m以上離れた場所では通信や給電が難しく、計測することができません。
上記の課題に対して、電気的なノイズに強く、かつ長距離にわたり伝送を行うことができる光ファイバに着目しました。電気と光を切り替えるシステムを構築して光ファイバでの通信と給電を実現するとともに、電気式の水質センサを組み合わせて計測するハイブリッド型の計測装置を開発しました。これにより、1kmを超える遠隔地や大深度でも、地下水の水圧や化学パラメータを安定的に計測することができます。
特許出願中
光ファイバ式多項目水質計測技術の概念図
- キーワード
- 光ファイバ、光給電、光通信、地下水、水質計測
特長・メリットココがポイント
光ファイバにより長距離での通信・給電を実現
地層処分では、周辺の地下水の流れに伴う放射性物質の動きを把握するため、地下水の物理的・化学的な状態を把握することが重要です。一方で、地層処分施設は、地下300mより深い深度に建設が予定されているため、長距離での計測が求められます。
地層処分で必要な地下水に関する主要情報
長距離計測を実現するために、光ファイバを用いて通信するための光通信ユニットと電力供給を行うための光給電ユニットを開発しました。光通信ユニットでは、センサから出力される電気信号を光信号に変換し、再度地上部で電気信号に変換することができます。また、光給電ユニットでは、レーザーで出力する光エネルギーを光電池により電気に変換することができます。これにより、長距離での計測データの伝送と、非常に小さい損失での電力供給が可能になりました。
この技術はあらゆる電気式の計測装置に展開できる技術ですが、光通信ユニットと光給電ユニットを電気式の水質センサに搭載することで、地下水位や水温の様な物理パラメータだけでなく、電気伝導度(EC)、pH、酸化還元電位(ORP)の様な化学パラメータを取得することができます。
光通信・光給電ユニットの概念図
今回開発した装置を実際のボーリング施設で検証し、1km以上の伝送距離で従来の電気式センサと同等の計測結果が安定的に得られることを確認しました。
本装置による計測結果例
適用実績
観測用ボーリング施設
場所:東京都調布市
竣工年:2008年
規模:1本(35.25m)
学会論文発表実績
- 「光ファイバによる給電・通信機能を有した地下水の物理・化学パラメータ計測装置の開発(その1),(その2)」,土木学会,第77回年次学術講演会,2022年
- 「光ファイバによる給電・通信機能を実現した計測技術の開発 ─地下水の物理・化学パラメータ計測装置例─」,日本地下水学会,2021年秋季講演会,2021年