長寿命化コンクリート
「EIEN®」
物質遮断性、耐溶脱性に優れたコンクリート
古代ロ-マ遺跡や中国大地湾遺跡から、健全な状態を保った古代コンクリートが複数発見されています。そのコンクリートの分析をしたところ、コンクリートが炭酸化していることが確認されました。つまり、コンクリートが炭酸化することで化学的に安定化して耐久性が向上し、地中や海中に埋没しても健全に存在できたものと考えられています。
「EIEN」は、古代コンクリートの調査結果を、現代の最先端コンクリート技術に反映させた新しいコンクリートです。EIENは緻密であり、塩分など劣化因子の侵入を長期にわたり遮断し、すり減り抵抗性にも優れます。今までのコンクリートでは数十年で鉄筋が腐食し、耐久性が低下してしまう環境においても、100年単位の耐久性を確保することが可能です。
平成16年度日本コンクリート工学会 論文賞
平成12年度土木学会全国大会 優秀講演賞
特許登録済
EIEN概念図(炭酸化による表面の高耐久化)
- キーワード
- 炭酸化、耐久性、溶脱抵抗性、遮塩性、拡散係数、空隙率
技術の詳細
長寿命化コンクリート「EIEN」は、一般的な鉄筋コンクリート構造物においては鉄筋腐食を招く中性化のうち、炭酸化反応に注目しました。このコンクリートは、特殊混和材と炭酸イオンが反応することでセメント硬化体を緻密化し、耐久性を向上させるコンクリートです。
「EIEN」は表面近傍が緻密化しているため、物質遮断性およびすり減り抵抗性が向上します。物質遮断性に優れているため、波が直接作用する桟橋などの塩害環境下では、長期にわたり劣化因子である塩化物イオンの侵入を防ぐことができます。さらに、炭酸化によって溶脱抵抗性が向上するため、コンクリート中のアルカリが溶出せず、周辺環境のpHの上昇が抑制されるため、環境負荷を低減することができます。また、一般的なコンクリートであれば表面がすり減ってしまい、耐久性が低下してしまいますが、EIENは一般的な普通コンクリート(W/C=45%)よりもすり減り抵抗性が2倍以上あるため、長期にわたり健全性を維持することができます。
「EIEN」の製造方法は、プレキャスト工法と場所打ち工法の2種類の工法があります。プレキャスト工法は、コンクリート製品工場でEIENの打込みおよび炭酸化養生を行います。一方、場所打ち工法は、EIENを場所打ちし、現場で炭酸化養生を行います。
EIENの各工法
プレキャスト工法
場所打ち工法
また、本技術を利用した舗装用ポーラスコンクリート「EIEN-ROAD」は、炭酸化により、曲げ強度の向上と耐磨耗性の向上が可能となります。また、骨材の種類を変えることで、意匠に合わせてデザインを選定することができます。
EIEN-ROADのデザインの一例
さらに、EIENを放射性廃棄物の貯蔵容器に適用することも可能です。EIENの高い溶脱抵抗性により貯蔵容器の性能を長期にわたり確保し、高い遮へい性により高濃度の放射性廃棄物を長期間確実に閉じ込めることができます。
放射性廃棄物貯蔵容器
特長・メリットココがポイント
優れた耐久性その1:溶脱抵抗性
室内において作用水にコンクリートを浸漬し、作用水のpHを測定することで溶脱抵抗性を評価しました。
- 標準水中養生した供試体の作用水のpHが11.2~12.4であるのに対し、EIENはpHが9.0~11.0と低い値になり、溶脱抵抗性が高いことが確認されました。
溶脱試験結果(pHが低いほど溶脱抵抗性が高いことを示す)
優れた耐久性その2:遮塩性
海水中に7.9年間浸漬させた後、EPMAにて供試体内部の塩化物イオン濃度を測定し、遮塩性を評価しました。
- 普通コンクリートの供試体では内部まで塩化物イオンが浸透しているのに対し、EIENは表層から5mm程度までしか塩化物イオンが浸透していません。さらに、浸漬期間が長くなっても、それ以上浸透しないことが確認されました。
海中への浸漬試験結果(コンクリート中の塩化物イオン濃度が低いほど遮塩性が高いことを示す)
優れた耐久性その3:すり減り抵抗性
奥田式すりへり試験機を用いた摩耗試験により、すり減り抵抗性を評価しました。
- EIENは普通コンクリート(W/C=45%)に対して約2.8倍、高強度コンクリート(W/C=30%)に比べて約2倍のすり減り抵抗性を有することが確認されました。
摩耗試験結果(すり減り係数が低いほどすり減り抵抗性が高いことを示す)
優れた耐久性その4:遮へい性
厚さを変化させたコンクリートに線源(Cs137)を当て、コンクリートを透過した線量を計測することで遮へい性を評価しました。
- EIENは部材を厚くすることで遮へい率95%以上となり、これは50mmの鉄板を使用した場合と同じ遮へい性です。さらにEIENと鉄板と組み合わせることで99.9%まで遮へい率を高めることが可能です。
遮へい性試験結果(表面線量が低いほど遮へい性が高いことを示す)
適用実績
石油桟橋(プレキャスト工法)
規模:72m2
荷卸し桟橋(プレキャスト工法)
規模:12m2
荷卸し桟橋(場所打ち工法)
規模:26m2
学会論文発表実績
- 「γ-2CaO・SiO2 および各種ポゾランを添加した硬化体の炭酸化反応による空隙充てん機構」,土木学会論文集E2,Vol.68,No.1,2012年
- 「γ-2CaO・SiO2 を添加したセメント系材料の各種炭酸化養生条件における物理・化学特性」,土木学会論文集E2,Vol.68,No.3,2012年
- 「炭酸化コンクリートの海洋環境下における耐久性評価」,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.1,2012年
- “New Renovation Method for Jetty Structure Using High Durability Concrete Form Cured with CO2 Gas”, Journal of Advanced Concrete Technology, 8(3), 2010年
- “High Durability Cementitious Material with Mineral Admixtures and Carbonation Curing”, Waste Management Volume 26, Issue 7, 2006年