運用中のコンクリートダムにおける
大規模堤体切削
既設コンクリートダム堤体を切削・改造して放流能力を増強
既設ダムの機能を向上させるため、放流設備の改造・増設は多くの既設ダムで実施されています。その方法としては、①ダム堤体を切削撤去してゲートを改造・増設する方法 ②ダム堤体を削孔して、放流管・ゲートを増設する方法 ③ダム堤体ではなく、地山に迂回トンネルを掘り、放流管・ゲートを増設する方法 などがあります。
「長安口ダム」、「浜田ダム」では、①の運用中の既設コンクリートダム堤体を大きく切削撤去する方法で、放流設備の改造・増設を行っています。
浜田ダム再開発:令和2年度土木学会賞 技術賞(Ⅱグループ、浜田川総合開発事業)
長安口ダム再開発:令和元年度土木学会賞 技術賞(Ⅱグループ)
第23回国土技術開発賞 入賞

既設堤体切削撤去中の長安口ダム
- キーワード
- ダム再開発、コンクリートダム、コンクリート取り壊し、無振動工法、安定性、挙動監視
長安口ダムの既設堤体切削の概要
長安口ダムの既設堤体切削の概要
長安口ダムの本体非越流部に増設される洪水吐きゲートは、幅10m、高さ26mと国内最大級の大きさであり、これを、運用中のダム堤体を幅11m、最大高さ37m、奥行き30mにわたって切削撤去し、増厚コンクリートを打設しながら据え付けます。貯水池に水を貯めた状態で施工するため、上流側を予備ゲート設備により締切ります。
既設堤体のコンクリート切削撤去に際しては、振動・衝撃等で運用中のダムに影響を及ぼさない様、無振動工法を採用しました。ワイヤーソー、コアボーリング、油圧ジャッキ等を組み合わせて、撤去用の揚重機の吊上げ能力に合わせた大きさでブロック状に分割し、順次撤去を行います。堤体切削の後、新たな洪水吐ゲートを設置します。

既設堤体コンクリートブロック分割状況

200t吊級クローラクレーンによるブロックの搬出状況
ダムを運用しながらの既存堤体切削時の施工上の注意点
堤体の安定性の確保
重力式コンクリートダムは、堤体コンクリートの重量で上下流方向の安定性を確保しています。運用中のダムでは、改造工事中においても所定の安全率は確保されていなければなりません。切削撤去の規模が大きい場合には、撤去に先立って、マットコンクリートを打設する等、施工中の堤体の安定性を確保する必要があります。

長安口ダム標準断面(① ⇒ ② ⇒ ③の順に施工)
残壁の挙動と変位抑制
一般にコンクリートダム堤体はダム軸方向に15mを一単位としたブロックに分割されています。切削規模が大きくなると、撤去後のブロック残壁が薄くなり、その挙動とダム軸方向の安定性が問題になることがあります。施工前から各所に観測計器を配置して挙動を監視するとともに、場合によっては、残壁と隣接ブロックを連結するといった変位・倒壊抑止工を実施することもあります。

隣接ブロックとの連結例(長安口ダム)
適用実績

H26-30長安口ダム施設改造工事
場所:徳島県那賀郡那賀町
竣工年:2020年3月
発注者:国土交通省四国地方整備局
規模(既設ダム):重力式コンクリートダム
堤高85.5m 堤頂長200.7m 堤体積28.3万m3 既設堤体切削撤去8,328m3

浜田川総合開発事業浜田ダム再開発工事
場所:島根県浜田市
竣工年:2020年3月
発注者:島根県
規模(既設ダム):重力式コンクリートダム
堤高58.0m 堤頂長184.25m 堤体積10.7万m3 既設堤体切削撤去4,144m3
学会論文発表実績
- 「既設ダムの大規模切削における堤体変位対策」,土木学会,第75回年次学術講演会,Ⅵ-104,2020年9月(長安口ダム)
- 「ダム再開発工事における堤頂部の既設取壊しおよびコンクリート工事の施工実績」,土木学会,第75回年次学術講演会,Ⅵ-102,2020年9月(浜田ダム)
- 「供用中ダムにおける大規模な堤体切削工事の施工実績」,土木学会,第71回年次講演会,Ⅵ-499,2016年9月
- 「供用中のダムの大規模切削工事における情報化施工」,土木学会,第71回年次講演会,Ⅵ-500,2016年9月