復興まちづくりのモデル地区。まちづくりを丸ごと担う
高さ約20mにも及ぶ津波に襲われた宮城県・女川町は、住まいや町の基幹産業である漁業施設のほとんどを失いました。高台の住宅地整備と漁業関連基盤整備の2つを柱とした復興まちづくりは広範囲に及びます。
鹿島・オオバJVは、コンストラクション・マネジメント(CM)方式を活用した復興まちづくり事業を受注し、震災復興工事の施工・調査・測量・設計業務に加え、震災復興工事の総合的なマネジメントを実施しました。復興まちづくりのモデル地区として、また、一日も早い復興をというニーズに応えるべく、鹿島の総合力を発揮し、2020年3月末を以って受注した復興事業が完了します。
平成27年度土木学会賞 技術賞(Ⅰグループ)
2019年度土木学会デザイン賞 最優秀賞
女川町震災復興事業
- 事業者
- 女川町
- 発注者
- 独立行政法人 都市再生機構
- 施工者
- 鹿島・オオバ女川町震災復興事業共同企業体(おながわまちづくりJV)
- 業務内容
- 震災復興の造成工事に関するマネジメント業務、
地質調査、地形測量、詳細設計、許認可に関わる図書作成および施工業務 - 工事概要
- 中心市街地222ha、離半島部14地区55ha
- 工期
- 2012年10月~2020年3月
完了のご報告
復興まちづくりのモデル事業として─7年半にわたる復興事業が完了
2011年3月11日の東日本大震災で、宮城県女川町は巨大な津波により、多くの住まいや漁業施設に甚大な被害を受けました。
これを受け、2012年3月に、女川町と独立行政法人都市再生機構は「女川町復興まちづくりパートナーシップ協定」を締結。同年10月に、独立行政法人都市再生機構と鹿島・オオバJVは「女川町震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務」について協定を結びました。
女川まちづくり事業において、鹿島・オオバJVは、宅地造成や上下水道などのインフラ整備において、調査、測量、設計、施工に加え、関係各者との協議・進捗調整などのマネジメント業務を実施しました。女川町の早期復興を目的にコンストラクションマネジメント(CM)方式及び、ファストトラック方式を採用しました。着手可能となったエリアから順次着工、順次引渡しを行うこの方式は、復興事業のモデルケースとして、その他のまちづくり事業にも展開されました。
2020年3月、中心市街地約220ha、離半島部14地区約55haに及ぶ各地区の造成、インフラ整備が完了し、漁業施設や女川駅周辺の商業施設、災害公営住宅、戸建住宅も完成しています。加えて、交通インフラの整備・再開による観光客の増加等により、まちは賑わいを取り戻し、真の復興への歩みを進めています。
7年半にわたる事業を終えた3代目所長・深山直志所長は「震災後1年半が経過して現場に乗り込みましたが、当時はまだガレキが残っていて、復興する姿を想像できないような状況でした。そこから女川町、独立行政法人都市再生機構と三位一体となって、地域住民の方々の協力も得ながら、7年半をかけてようやくここまで辿り着きました。今は、町全体を作るというこれまでに類を見ない大規模な事業をやり遂げた達成感でいっぱいです。当事業にご協力いただいた大勢の方々に感謝申し上げるとともに、女川町が震災復興から次のステージへ向かって発展していくことを心から祈念致します。」と語っています。
東日本大震災発生から9年。復興まちづくりのシンボルともいえる女川まちづくり事業の一環である基盤整備工事が完了します。
各地区の竣工後の様子
CM方式によるまちづくり
女川町では、都市再生機構(UR)と「復興まちづくり推進パートナーシップ協定」に調印し、民間支援による復興まちづくりをスタートさせました。URはまちづくり事業をコンストラクション・マネジメント(CM)方式を活用した事業手法で鹿島・オオバJVに一括発注しました。
鹿島・オオバJVは、宅地造成と共に上下水道などのインフラを総合的に整備していく中で、調査、測量、設計施工一括に加え、復興事業の執行計画(スケジュール等)、執行管理の補助等を含むマネジメント業務を行っています。CM方式と鹿島JVの総合力の活用により、調査、設計、施工の全体スケジュールの効果的な短縮を図り、かつファストトラック方式を採用することで、迅速な復興の実現に寄与しています。この新しい試みは復興まちづくりのモデルケースとして注目されています。
市街地周辺の山を切り崩しその土で低地をかさ上げ
女川町の復興まちづくりでは、これまで漁港を取り囲むように低地に広がっていた宅地を高台に移し、低地には水産加工団地、商業施設、公共施設などを整備することで、津波に対して安全な街づくりを目指しています。中心部の造成工事では、市街地周辺の山を切り崩し、その土で低地をかさ上げします。その土量は約600万m3、10tダンプ120万台分に相当します。住民の生活再建の早期実現に向けて、大型重機を用いた造成工事が進んでいます。
Column 業務の透明性を確保する「オープンブック方式」
CM方式を活用した復興まちづくり事業では、受注者が発注者に全てのコストに関する情報を開示する「オープンブック方式」が採用されています。一般に、公共工事は契約時に全体の請負金額が決まり、施工者は計画に基づいて工事をする中で利益を生み出していくのに対し、このオープンブック方式は、原価に対して一定の割合でフィーが支払われる方式です。そのため、より業務の透明性を確保することができます。発注者または第三者の監査によって透明性を確保した上で、地域との連携を図りながら業務を行っています。
広範囲にわたる整備エリア
Column 女川まちづくり 復興事業基盤工事 ついに完成
2019年3月23日、宮城県牡鹿郡女川町のJR女川駅ロータリー横において、女川町震災復興事業の基盤工事概成を記念し建立された記念碑の除幕式が行われました。
式典では発注者である都市再生機構 宮城・福島震災復興支援本部・椿本部長からのご挨拶に続き、受注者を代表して鹿島土木管理本部・利穂執行役員が挨拶を述べました。その後、女川町・須田町長ら来賓からの挨拶に続き、復興事業記念碑の除幕式が執り行われました。合図に合わせて除幕を行うと会場は盛大な拍手に包まれ、関係者一同にて復興事業基盤工事の概成を祝いました。
今後、鹿島JVは、JR女川駅前プロムナードから女川港まで続く公園などの整備を行っていき、さらなる復興まちづくりへ貢献していきます。
2018年2月
中心市街地
市街地の大型土工事は堀切山を除いてほぼ完了しました。中心市街地エリアは道路を切り替えながら、商業用地や緑地などを整備中です。造成工事の完成に伴い、災害公営住宅の完成も相次ぎ、2017年度末には完成する予定です。災害公営住宅の完成や女川駅周辺の商業施設の竣工などにより町全体が賑わいと活気を取り戻しています。
離半島部
離半島部での全ての宅地引き渡しが完了し、高台に造成された新たな宅地に住宅が立ち並ぶ様子が見られるようになっています。また、漁業集落の整備(浜の再生)工事もすべての集落で開始され、一部の集落では整備が完了して供用が開始されています。
2017年1月
中心市街地
まちづくり事業の開始から4年半近くが経過し、早期整備エリアでは多くの地域の引き渡しが完了し、低地の水産加工施設や高台復興住宅の建設も進んでいます。次期整備エリアも多くが着工し、造成工事が急ピッチで進んでいます。
離半島部
広範にわたる離半島部の各整備エリアも、宅地造成が完了し引き渡しが行われる地域が増えています。多くの地域で住民の皆さんの新たな生活が始まっています。
Column 現場見学会開催 女川から熊本へメッセージ
2016年5月14日、女川町が主催した現場見学会が開催されました。周辺にお住まいの方を対象に、工事の進捗状況を知っていただく目的で開催されました。参加者はバスで堀切山の高台にのぼり、工事が進む鷲神浜地区を見渡たし、担当者から工事の進捗状況の説明を受けました。このほか、工事に使用している重機の展示なども行われ、子供たちは目を輝かせて重機の運転席に上っていました。
女川まちづくり事業では、住民の方を対象とした見学会を数多く開催しており、次回は2016年秋の開催を予定しています。
また、この日は参加者によって「ガンバッペ熊本」の人文字が作られ、大地震から1か月が経った熊本に向けて、女川からエールが送られました。
2016年1月
中心市街地
2015年3月に新しい女川駅が開業し鉄道の運行が再開、同年12月には駅前商業エリアのまちびらきが盛大に行われるなど、女川駅周辺には活気が戻ってきています。鷲神浜エリアでは、大型重機による切盛土工事が進んでおり、宮ケ崎水産加工団地エリアでは、水産加工場が稼働を開始しています。造成工事の進捗とともに、順次引き渡しが完了した地区で様々な新しい施設が動き出しています。
離半島部
離半島部では、出島地区をはじめ幾つかの地区で宅地造成工事が完了し、宅地の引き渡しを終えた地区の中には住民の方々の居住が始まっているところもあります。当JVでは宅地造成工事だけでなく、上下水道工、雨水排水工、防災工などのインフラ工事も併せて実施しており、住民の皆さんの早期居住の実現に寄与すべく、町内各所で様々な工事を展開しています。
2015年1月
中心市街地
中心市街地では、荒立西・東地区の高台住宅団地の2地区が完成し、残り16地区についても全面的に工事を進めています。既に完成引渡済の水産加工団地で は、女川町の基幹産業である水産加工業関連の建築工事が順次進んでいます。また、女川町民の足となるJR女川線の基盤工事及び女川駅周辺の整備完了ととも に、2015年3月21日にまちびらきを迎えます。
離半島部
女川中心市街地から概ね5~16kmの位置にある半島部の高台住宅団地13地区は、急ピッチで工事が進み大石原浜地区・野々浜地区が完了しました。離島の 2地区は出島地区が完成し、寺間地区は2015年5月に完成を迎えます。また、順次、漁業集落整備(浜の再生)工事を予定しています。
2014年2月
中心市街地
2012年末より順次整備している荒立西・東地区は竣工に向け、現在急ピッチで整備が進んでいます。また、女川駅周辺の工区においては重ダンプなど大型の重機を用い整備を進めています。更に今後、内山地区・宮ケ崎地区・石浜地区が本格着工となります。
離半島部
北浦エリアでは、桐ケ崎、指ケ浜、御前浜が着工となっており、五部浦エリアでは、各地区送水管の整備が進むとともに、大石原浜の竣工を控えています。離半島部では、出島地区が竣工し、引き続き寺間地区の工事が着工となります。また、離半島部各エリアにおいて2014年度中にほぼすべての工区が着工となる予定です。