きめ細かい分別と中間処理で、
広範囲にまたがる約88万トンの災害廃棄物を処理
リアス式の美しい海岸が続く岩手県・宮古地区でも、沿岸部を中心に津波被害は甚大で、家屋の倒壊等により大量の災害廃棄物が発生しました。
鹿島JVは岩手県から宮古地区(宮古市、岩泉町、田野畑村)の災害廃棄物破砕・選別業務を受託し、南北約50kmに及ぶ広い範囲に点在する合計約88万トンの災害廃棄物の処理を効率的に行いました。この災害廃棄物処理業務が本格復興の足掛かりとなるよう、「地域とともに」「つながる復興」をテーマに掲げ、2014年3月に処理を終えました。
岩手県災害廃棄物処理業務 宮古地区災害廃棄物破砕・選別等業務委託
岩手県災害廃棄物処理業務 宮古地区災害廃棄物破砕・選別等(その2)業務委託
- 委託者
- 岩手県
- 受託者
- 鹿島・三井住友・鴻池・西武・三好・斎藤工業特定業務共同企業体
- 業務場所
- 宮古市、岩泉町、田野畑村
- 業務範囲
- 一次仮置き場の管理・粗選別、二次仮置き場での中間処理・中間処理施設設置、
リサイクル/処理・最終処分先への運搬、一次・二次仮置き場の返納整備 - 受託期間
- 2011年12月~2014年6月
完了のご報告
地元の方を中心とする延べ21万人あまりの手により処理を完了
宮古地区の災害廃棄物破砕・選別業務は、2012年12月に業務を開始し、約88万トンに及ぶ災害廃棄物の処理を2014年3月に完了しました。そして、2014年6月までに、9か所に設置した仮置き場の返還対応を含むすべての業務が完了しました。846日に及ぶ業務期間中、延べ21万6,000人余りが処理業務に従事しました。その多くが地元・宮古地区の方で、実際に被災された方もいました。
前例のない災害廃棄物の処理にあたり、地元企業との連携、地元建設業団体や運送業団体の協力を得て、無事業務を完了することができました。
中間処理後の約6割が復興工事の資材に
当業務における災害廃棄物取扱量は最終的に88万2,923トンとなりました。津波により様々なものが混在していた災害廃棄物を、粗選別やふるい選別などの中間処理により24種類に分別しました。そのうち可燃物は焼却先が自治体や企業等多岐にわたるためサイズや仕様が異なり、きめ細かい分別と中間処理を実施しました。
本業務で中間処理を行った災害廃棄物の約60%が復興工事の建設資材として活用されました。さらに、セメント資材化やサーマルリサイクルを行う処理施設への搬出等により、リサイクル率は83.6%を達成しました。
南北約50kmに点在する仮置き場
宮古地区の災害廃棄物の一次仮置き場は9か所に点在しており、南北の距離は約50kmにも及びます。この9か所の一次仮置き場から、まず、5か所の集約選別拠点に送られ粗選別を行った後、混合物の中間処理施設を有する2か所の二次仮置き場(藤原埠頭・宮古運動公園)で処理を行っています。宮古地区では、ほとんどの廃棄物の運搬をダンプトラックで行っていますが、効率的なダンプ運行計画の立案と、携帯電話のGPS機能を利用した速度管理システム「モバイルG-Safe®」等を活用して、安全かつ渋滞発生の抑制に務めた陸上運搬を行っています。
焼却は多様な処理施設にて行うため、
きめ細かい選別・処理を行う
宮古地区の廃棄物処理業務の最大の特徴は、二次仮置場に焼却施設を併設せずに処理を行うことです。可燃物はサイズごとに分別し、岩手県から別途業務委託を受けた自治体や企業、仮設焼却炉等の処理・処分先へ運搬し、焼却しています。可燃物だけでも12か所の搬出先があり、受け入れ先に応じてサイズや仕様、また、その後の焼却方式も異なることから、きめ細かく精度の高い処理が求められています。また、それぞれ要求基準に応じて放射性濃度測定やごみ質分析、塩素濃度測定等を行い、安全性を確認して搬出しています。可燃物の搬出先は仮設焼却炉、岩手県内の自治体やセメント会社、広域処理では、大阪府や群馬県、東京都、秋田県など多岐にわたっています。
中間処理フロー
人の目と手による徹底した精度の高い選別作業
津波による災害廃棄物は、通常の廃棄物と異なり多量の土砂が含まれています。さらに、中間処理後の受け入れ先が多様であるため、高度な選別が求められ、宮古地区では多段階の中間処理を実施しています。混合物は選別の手間をできるだけ少なくするために、ダンプトラックへ積込む前に、混合物の山の状態で重機による「粗粗選別」を実施しています。その後、回転式ふるい機で土砂を分離します。土砂が取り除かれた混合物は、平らに敷き均し重機で粗選別を行った後、人の手による選別が行われます。人間の五感をフルに活用し、機械ではできないきめ細かな選別を行います。人の目と手によって品目ごとに細かく選別することにより、その後の中間処理を手戻りなく円滑に行うことができます。
多様な品目に対応する中間処理施設
粗選別を経た廃棄物は、藤原埠頭と宮古運動公園の2か所に設けられた二次仮置き場の中間処理施設で処理されます。この2か所の二次仮置き場では、(1)可燃・不燃系混合物の破砕選別設備、(2)津波堆積物ふるい選別設備、(3)コンクリートガラ破砕選別設備、(4)漁具・漁網、金属、処理困難物せん断設備、(5)発砲スチロール・スタイロフォーム減容設備を設けて中間処理を行い、それぞれの処理先や再利用先へ規格廃棄物、復興資材を搬出しています。
(1)可燃・不燃物混合物破砕設備
(2)津波堆積物ふるい選別設備
(3)コンクリートガラ破砕選別設備
(4)漁具・漁網、金属、
処理困難物せん断設備
(5)発砲スチロール・
スタイロフォーム減容設備
「つながる復興」に向けて
宮古地区の処理事業では、「つながる復興」をスローガンに掲げ、地元経済への貢献を重視しています。具体的には地元雇用と地元企業の採用を積極的に行っており、その結果、作業員の県内居住比率は93%にのぼり、作業員用の仮設宿舎等は設けずに事業を行っています。また、作業員に対して事業終了後も建設業に従事していただけるように小型移動式クレーン等の技能講習を行ったり、事業終了時に向けた作業員のアフターケアとして、ハローワーク宮古と共同で「再就職支援プログラム」を開催しています。また、地元の小中学生や大学生を対象とした現場見学会も積極的に行っており、未来を担う世代への「つながる復興」を目指しています。