震災がれきを利用し日本初のCSG防潮堤を建設
東日本大震災で津波の被害を受けた福島県いわき市の夏井地区海岸。ここに、2013年、長さ約1km高さ最大9mの新しい防潮堤が完成しました。粘り強い防潮堤を早期につくるため、防潮堤の材料に東日本大震災の際いわき市で発生したコンクリートがれきを用い、CSG工法と呼ばれるダムに適用される技術を採用しました。CSG工法を用いて海岸防潮堤を建設するのは日本で初めてです。
夏井地区海岸堤防工事
- 発注者
- 福島県
- 施工者
- 鹿島
- 工事概要
- 延長920m、体積60,000m3(CSG堤40,000m3)、高さ 最大9m
- 工期
- 2012年12月~2013年11月
"粘り強い"防潮堤を早期につくる
東日本大震災の際、盛土の表層をコンクリートで保護した従来型の防潮堤は、内部の盛土部の土砂が津波により流出し崩壊したケースが多くみられました。この夏井地区海岸にはこれまで防潮堤がなかったため、早期に防潮堤の構築が望まれていました。そこで福島県は、なるべく早期に"粘り強い"防潮堤を構築するために、「CSG工法」を採用し防潮堤を構築することにしました。
CSG工法とは、ダム技術センターが中心となってわが国で開発された技術で、建設現場周辺で手に入る材料を用いてダムの堤体等を築造することで、環境負荷低減とコスト低減が図れる工法です。既に、国内のダム工事に適用されており、鹿島は、世界初の台形CSGダムである当別ダム(北海道)を施工しました。
2013年3月に堤防本体のCSGを打設開始して以来、約7ヶ月という短工期で堤防を完成させました。
震災で発生したコンクリートがれきの有効利用
東日本大震災で発生したいわき市のコンクリートがれき約50万m3のうち、4万m3を夏井地区海岸のCSG防潮堤の材料として利用しました。コンクリートがれきは、建設資材として活用されなければ一般廃棄物として処分する必要があります。コンクリートがれきを防潮堤の材料とする今回の試みは、がれきの有効活用の面からも、また、処分費用の面からもメリットがあります。今後の震災がれきの活用法として注目を集めているだけでなく、全国で防潮堤を計画している自治体等からも高い関心が寄せられ、工事期間中に約400人の見学者が訪れました。
CSG防潮堤の作り方
CSGは、現場周辺で採取できる材料をCSG材として利用し、これにセメントと水を混ぜて製造します。夏井地区海岸防潮堤工事では、震災で発生したいわき市のコンクリートがれきを使用してCSG材を製造しました。コンクリートがれきにはレンガやタイルなど様々なものが混じっているため、事前の試験施工を繰り返し行い、粒度の範囲や単位水量、強度を決定しました。さらに振動ローラの転圧回数や重機の改良など施工方法に関する試験を行い、施工・品質管理フローを作成し施工に臨みました。試験施工から工事完了までダム技術センターの評価を受けながら施工を進めました。
施工にあたっては、特殊な重機ではなく調達しやすい汎用性のある重機で行いました。
CSG防潮堤の施工フロー
Column 地元の小学生らが完成記念植樹
夏井地区海岸堤防の完成を記念して、2013年10月31日、地元のいわき市立夏井小学校の児童ら約30人が記念植樹を行いました。
福島県内で最も早い防潮堤の完成を記念して行われたもので、参加した子供たちからは「堤防ができたので、もし津波がきてもこれからは安心」との声が聞かれました。