合理化技術を活用して除染作業が進む
福島第一原子力発電所の事故による除染について、富岡町では2013年から本格除染が行われており、鹿島JVでは除染対象面積4,690haのうち、南半分の2,900haの除染工事を行いました。2017年4月には、避難指示解除準備区域及び居住制限区域が解除されましたが、部分的に放射線量の高い箇所において、フォローアップ除染工事(2018年11月竣工)を実施し、帰還困難区域では、本格除染の第一弾として夜の森地区除染工事(2019年3月竣工)を施工しています。2019年3月現在、新規工事として、特定復興再生拠点区域内にて、本格除染を実施していますが、線量管理や出来形管理、数百人に及ぶ作業員の労務管理をITにより合理化し、確実に除染作業を進めています。
平成28年度富岡町除染等(その4)JV工事
- 発注者
- 環境省
- 工事場所
- 福島県双葉郡富岡町 地内
- 施工者
- 鹿島・日立製作所・鉄建・飛島特定建設工事共同企業体
- 対象区域
- 福島県双葉郡富岡町(富岡町全域)
- 工事数量
- 宅地等除染約270区画、農地除染約45ha、宅地フォローアップ除染約1,800区画 その他
- 工期
- 2016年4月~2018年2月
平成29年度(平成28年度繰越)富岡町除染等工事(夜の森地区他)
- 施工者
- 鹿島・飛島特定建設工事共同企業体
- 対象区域
- 福島県双葉郡富岡町(帰還困難区域内の一部)
- 工事数量
- 住宅等43ha、道路6ha、除去土壌運搬30,900m3
- 工期
- 2017年5月~2019年3月
平成29年度(平成28年度繰越)富岡町フォローアップ除染等工事
- 施工者
- 鹿島・飛島・鉄建特定建設工事共同企業体
- 対象区域
- 福島県双葉郡富岡町(解除済区域)
- 工事数量
- 住宅等4.5ha、農地37ha、保管物の仮置場への取込27,900m3
- 工期
- 2017年9月~2018年11月
平成30年度富岡町特定復興再生拠点区域被災建物等解体撤去等及び除染等工事(その1)
- 施工者
- 鹿島・三井住友・鉄建・飛島特定建設工事共同企業体
- 対象区域
- 福島県双葉郡富岡町(特定復興再生拠点区域他)
- 工事数量
- 住宅 32.5ha、農地21.3ha、森林17.69ha
- 工期
- 2018年8月~2019年3月
3,000haに及ぶ広範囲を除染
2018年2月
除染(その4)工事
2013年から行われている本格除染工事の面的除染の継続工事で、2018年2月末で竣工を迎えました。
夜の森地区除染工事
2017年5月から「帰還困難区域」にあたる富岡町北部の夜ノ森駅周辺の除染が開始されました。この工事は「特定復興再生拠点区域」となる場所での除染工事の先駆けとなっています。除染面積は50haほどですが、夜の森地区は震災前から桜の名所として知られており、全国から観光客が訪れるスポットとして有名です。
フォローアップ除染工事
本格除染から継続される工事で、特に放射線量が局所的に高い箇所(アスファルト、コンクリート面に発生したクラック箇所)の撤去・復旧作業、生活圏に隣接している森林などの除染作業を行っています。
2017年1月
2017年1月現在行われている(その4)工事では、2013年8月から2015年3月に行われた本格除染(その1)工事で未着手の場所、たとえば、建物解体後に除染を希望している宅地や、川が障害となり渡れなかった田畑や森林の除染が行われています。またフォローアップ除染として、本格除染で一通り作業を行ったものの部分的に放射線量が高い箇所について、本格除染メニューにはないアスファルト舗装やコンクリートクラック部分の斫り・撤去・再舗装などの追加的な除染が行われています。
2015年2月
約3,000haに及ぶ富岡町南側の対象地域内での除染は、宅地や農地、森林等広範囲で行われています。仮置場では除染作業で発生した廃棄物の詰込、保管作業も行われています。先行している道路の除染はほぼ9割完了しています。1日あたり2,000人以上の作業員が除染作業にあたっており、作業前後には放射線量のスクリーニングが行われています。
2014年2月
富岡町では、2013年からの本格除染に先立ち、町役場や消防署、警察署等の公的拠点施設や小中学校、スポーツセンター、ポンプ場等のインフラ施設の除染作業を緊急除染工事として先行して行い、その効果を確認しました。そして、2013年8月から「避難指示解除準備地域」にあたる富岡町の南側3,000haの本格除染工事が開始されました。除染面積は1,200haに及び、その面積は山手線内側の面積の5分の1に相当します。
鹿島JVでは除染作業を「安全第一」、「地元の方の気持ちを考えて作業しよう」、「放射線被ばくを最小限にしよう」の3つを基本方針に掲げて、着実に作業を行っています。
装着式の放射線モニタリングシステムの開発
除染作業では、除染工事前後の放射線量をモニタリングすることが非常に重要です。そこで、鹿島では従来よりも機器を軽量化し一人で計測が行える装着式の線量モニタリングシステムを開発しました。従来型よりも精度よくまた、スピーディに計測地点に誘導することができ、放射線計測器から記録用タブレットにデータを無線伝送することにより、計測員によるバラつきや転記ミスの恐れもなくなります。富岡町の本格除染に導入し、スピーディかつ正確な線量モニタリングに威力を発揮しています。
指紋認証を用いた作業員の労務管理・線量管理システムの開発
富岡町本格除染では、1日あたり2,000人以上の作業員が除染作業に従事しています。その作業員一人ひとりの作業日数、作業時間を正確に把握し、かつ、被ばく線量を確実に管理するために、指紋認証を用いた労務管理・線量管理システムを開発しました。入場時に指紋により作業員を認識し同時にポケット線量計を貸し出します。退場時に再度指紋認証により作業員を特定すると同時にポケット線量計を読み取り機に置くことにより、その日の被ばく線量を自動的に記録すると共に作業員ごとの累計被ばく線量を管理します。
GIS(地理情報システム)を用いた出来高管理システムの開発
除染工事の進捗状況を把握する新たなシステムを開発し、富岡町本格除染工事で導入しています。これまでは紙ベースで日々の作業指示と作業記録・作業報告が行われていました。しかし、富岡町では作業班が数百以上に及ぶため、GIS(地理情報システム)上に除染業務フローを展開し、各エリアマネージャーがタブレット端末で作業記録を入力することにより、全体の進捗状況を一元管理することのできるシステムを開発したものです。クラウド上でデータを一元管理するため、WEBブラウザからどこからでも工事全体の進捗状況を閲覧することができるようになりました。
Column ほっとステーション、来場者1,200人突破
2014年8月に開設した「とみおか『除染の駅』ほっとステーション」がオープンしてまもなく1年。2015年6月末で来場者が1,283人に達しました。来場者からのメッセージが書かれた桜の花びらも壁に貼りきれないくらいになり、ふるさとへの復興の思いや除染作業に従事する担当者への激励のメッセージが多数寄せられています。
また、ほっとステーションに常駐している女性スタッフによる手作りの折り紙の作品がステーションを彩っており、来場者からも好評を得ています。
この「とみおか『除染の駅』ほっとステーション」は火曜日から土曜日の10時~15時の間オープンしていますので、是非お立ち寄りください。
Column 除染工事の情報発信基地、オープン
2014年8月26日、富岡町中央二丁目に「とみおか『除染の駅』ほっとステーション」がオープンしました。このほっとステーションは広く除染工事への理解を深めていただくために、工事概要や手順を紹介するパネルを展示しているほか、住民の方々のコミュニケーションの場となるよう、椅子とテーブルも用意されています。
また、メッセージコーナーでは、桜の町・富岡にちなんで、桜の花をモチーフにしたメッセージカードに、見学者や視察にいらした方からメッセージを書いていただき、ボードに貼っています。除染工事の進捗とともに、ボードの桜も満開になっていくことでしょう。
この「とみおか『除染の駅』ほっとステーション」は火曜日から土曜日の10時~15時の間オープンしており、説明員が常駐しています。