福島の復興支援道路で最大規模の橋梁
常磐自動車道と東北自動車道を結ぶ相馬福島道路(約45km)。この相馬福島道路で最大級の橋梁が橋長462mの月舘高架橋です。相馬福島道路は国交省が事業化した「復興支援道路」の一つであり、被災地と内陸を結ぶ重要道路として位置づけられています。
鹿島はこの復興支援道路のリーディングプロジェクトである月舘高架橋の上部工工事を担当しました。
国道115号月舘高架橋上部工工事
- 発注者
- 国土交通省 東北地方整備局 福島河川国道事務所
- 工事場所
- 福島県伊達市月舘町御代田字扶桑畑地内
- 施工者
- 鹿島
- 工事概要
- PC6 径間連続ラーメン箱桁橋 橋長462m 幅員12.8m(拡幅部15.3m) 最大スパン91.0m、
橋脚高さ最大44.5m - 工期
- 2014年9月~2016年10月
完了のご報告
2年の工事期間を終え、月舘高架橋上部工工事が完成
2016年10月27日、月舘高架橋上部工工事の「連結式」が行われました。連結式には工事関係者や近隣の地権者約60名が出席して行われました。神事のあと、30cm四方の箱抜きされた床版部に仁志田伊達市長と地元の月舘小学校の児童代表によりコンクリートが投入され、最終のコンクリート打設が行われました。連結式後には、招かれた月舘小学校の3~6年生の児童ら約70人が橋面にチョークによる自由写生を行いました。子どもたちは目を輝かせながら完成間近の橋の上に思い思いの画を描き、歓声を上げていました。
2016年10月31日、月舘高架橋は無事完成を迎えました。工事を統括した南雲広幸所長は「2014年に現場に乗り込んでからちょうど2年。工事期間中、発注者、地元、協力業者、いろんな方とのご縁があり、皆様のご協力、ご支援をいただきながら工事を進めて無事竣工を迎えることができました。福島の復興に少しでも貢献できたことを技術者として誇りに感じています」と語っています。
福島市と相馬市を結ぶ復興支援道路「相馬福島道路」のリーディングプロジェクトである月舘高架橋の完成により、人やものの流れが活発化し復興のスピードもますます上がることが期待されます。月舘高架橋を含む霊山IC~阿武隈IC区間の開通は2017年度の予定です。
復興まちづくりを加速する復興支援道路
東日本大震災からの復興を目指して、国土交通省は太平洋沿岸を南北に走る三陸沿岸道路を「復興道路」として、また、主要な都市と三陸沿岸道路を結ぶ3つの道路を「復興支援道路」として事業化し、各地で工事が進んでいます。復興支援道路の一つである相馬福島道路は、福島県の県庁所在地である福島市と沿岸の相馬市を結ぶもので、2016年度から順次開通予定です。
被災地と内陸部の連携が強化されることで、被災地の復興がより推進されることが期待でき、早期開通を目指して整備が進んでいます。
張出し架設工法によるPC上部工の施工
月舘高架橋は5本の橋脚と2つの橋台、そして、PC(プレストレストコンクリート)製の桁で構成されるPC6径間連続箱桁橋です。プレストレストコンクリートとは、コンクリート内にPCケーブルを配置し、ケーブルを緊張させることで補強し、ひび割れを抑制するものです。
鹿島が施工を担当している上部工は移動作業車(ワーゲン)を用いて、やじろべえのように左右のバランスを取りながら張り出していく「張出し架設工法」で施工しています。この張出し架設工法により、最大スパン91mを中間の足場なしに施工することができます。
Column PC(プレストレストコンクリート)の原理
コンクリートは圧縮に強く引張に弱いという性質があります。コンクリートの桁に上から荷重をかけると下面に引張力が働き、ひび割れが起こります。そこで、コンクリート中にPCケーブルを設置して緊張させ、あらかじめ圧縮力を導入することで荷重がかかってもひび割れが発生しにくいコンクリート桁になります。
定点カメラ動画で見る月舘高架橋上部工工事の様子
月舘高架橋には2ヶ所に定点カメラを設置していました。定点動画で工事の様子がご覧になれます。
西側カメラ(2015年6月~2016年8月)(動画:1分12秒/音声なし)
東側カメラ(2015年6月~2016年8月)(動画:1分21秒/音声なし)
工事の様子
2016年7月
橋体が完成し、壁高欄の施工が開始されました。
また、橋の連結完了に伴って、橋のライトアップを実施しています。夏の夜空に月舘高架橋が美しく浮かびあがっており、地元の皆さんにも好評です。
2016年5月
すべての桁が連結し、全橋がつながりました。移動式作業車(ワーゲン)の解体作業も完了しています。
2016年3月
桁が連結し、移動式作業車(ワーゲン)の解体も行われています。
2016年1月
順調に桁の張出し施工が進んで、いよいよ桁の連結が進んでいます。
2015年11月
移動作業車(ワーゲン)による張出し施工が進み、だいぶ桁が伸びてきました。
2015年8月
それぞれの橋脚からワーゲンによる張出し施工が開始されました。2015年末には3つの橋脚からの張出し施工と2つの橋脚の柱頭部施工を同時に行う予定です。
Column 日建連と合同で現場見学会を開催
2015年10月31日、月舘高架橋上部工の現場で現場見学会が開催され、近隣の月舘町御代田地区にお住まいの方43名が参加しました。見学会は、日本建設業団体連合会(日建連)と合同で開催されたもので、近隣にお住まいの方々に建設業への理解、ならびに復興を支える建設業の担い手確保・育成の観点から、普段は入ることのできない建設現場を公開することで、橋梁建設技術、さらには建設業に興味・関心を持ってもらおうと企画、実施されました。
参加者は、南雲広幸所長から工事概要などの説明を受けた後、工事用エレベータで地上40mの高さの橋桁の上に移動。移動作業車(ワーゲン)を用いて行われている張出し架設工法による工事の様子を興味深そうに見学していました。
参加者からは工事担当者に活発な質問が寄せられ、「今まで遠くから現場を見ていて、どうやって橋を作っているのか不思議だったが、説明を聞いて理解できた。開通が楽しみ」等の感想が聞かれました。普段見ることのできない工事現場の内部の様子や、40mの高さから見る地元の風景にも歓声が上がっていました。
Column 月舘高架橋の足元に広がる桃畑
福島県は全国第2位の桃の生産地です。月舘高架橋上部工工事の現場周辺にも、桃畑が広がっています。春は濃いピンク色の桃の花が青空に映え、夏には桃がたわわに実る光景が広がります。