宮城県最大約300万トンの廃棄物を処理
東日本大震災により発生した津波は、東北・関東地方の太平洋沿岸を襲いました。この津波により沿岸部を中心に大きな被害が発生し、大量の災害廃棄物が発生しました。
この災害廃棄物を処理するために、宮城県では県内を4つのブロックに分け、民間企業による共同企業体に業務を委託することで、迅速かつ効率的な処理を行うことになりました。
鹿島では、宮城県内でも最大の約300万トンの災害廃棄物の処理を行う「石巻ブロック」の処理業務をJVで受託し、2014年9月に業務を完了しました。
平成26年度土木学会賞 技術賞(Ⅱグループ)
平成26年度地盤工学会賞 地盤環境賞
第13回産学官連携功労者表彰(国土交通大臣賞)
災害廃棄物処理事業(石巻ブロック)
- 場所
- 宮城県石巻市雲雀野町外地内
- 発注者
- 宮城県
- 受託者
- 鹿島・清水・西松・佐藤・飛島・竹中土木・
若築・橋本・遠藤特定共同企業体 - 対象区域
- 石巻市、東松島市、女川町
- 履行期間
- 2011年9月~2014年9月
完了のご報告
業務開始から丸3年、303万トンに及ぶ廃棄物処理を無事完了
石巻市、東松島市、女川町の災害廃棄物の処理を行う石巻ブロックでは、2011年9月からまず雲雀野埠頭に仮置きされていた約80万トンの災害廃棄物を大型フレコンパックに詰め、別の仮置き場へ運搬する作業を、昼夜で約9か月間実施しました。並行して処理施設の建設を行い、業務開始から約1年後に破砕選別処理施設、土壌洗浄施設、焼却施設などの処理施設が本格的に稼動しました。その後、21か月の処理期間を経て、2014年1月にすべての処理を終えました。その後、順次、中間処理施設等の解体及び現況復旧を行い、2014年9月末ですべての業務が完了しました。
最終的な処理量は、災害廃棄物232万トン、津波堆積物71万トン、合計303万トンに及びました。延べ42万5,000人もの作業員が従事し、復興の第一歩となる災害廃棄物処理業が終了しました。
最終的なリサイクル率は85%に
石巻ブロックでは、破砕選別、土壌洗浄、土質改質、場内焼却、可燃物広域処理などの処理が行われ、コンクリートガラや洗浄砂など81%がマテリアルリサイクルされました。更に、木くずやタイヤなどサーマルリサイクルを加えると最終的なリサイクル率は85%となりました。
これまでに経験したことのない災害廃棄物の処理業務で得られたノウハウと知見を、今後に活かしていく方針です。
宮城県内最大の災害廃棄物を2年半で処理
石巻ブロックの事業は、石巻港に隣接する雲雀野(ひばりの)埠頭の広大な敷地に、災害廃棄物の選別、焼却、処理、資材化する施設を建設し、早期に処理するための施設運営、処理を行い、処理が完了したあとは、施設の解体までを行う事業です。全体の敷地面積は東京ドーム約15個分にも及びます。
2011年9月から2014年9月までの事業期間に、合計約300万トンの災害廃棄物の処理を完了しました。
災害廃棄物の一次仮置き場は石巻市内だけで約25か所ありました。それらの一次仮置き場から処理施設までの運搬は主にダンプによる陸上運搬と、船舶による海上運搬が行われました。一次仮置き場から災害廃棄物を運ぶダンプは、ピーク時1日当たり延べ2,300台に及びました。また、北上・雄勝エリアと牡鹿エリアからは船による海上運搬を行うことにより、ダンプ車両を少なくし道路交通への影響を抑制、また、周辺環境への影響も抑えることができました。
リアルタイム運行管理システム「スマートG-Safe®」の開発
石巻市では、がれき処理関連の大量の車両の他、鉄道の運休に伴う通勤車両の増加も手伝って、市内の幹線道路は朝夕に激しい渋滞が発生していました。そこで、主要地点の交通状況や運搬車両の位置を現場事務所内の運行管理室でリアルタイムに把握し、交通渋滞や交通規制に応じて、フレキシブルに運搬ルートや積み込み場の変更をドライバーに指示することができる「スマートG-Safe®」を開発しました。石巻ブロックのダンプトラックに搭載し、ドライバーと運行管理室で情報を共有することで、運搬ルートの渋滞緩和に貢献し、安全・確実な運搬を可能にしました。
システム概念図
徹底した選別により
災害廃棄物を13種類に分別・リサイクル
災害廃棄物は、「混合廃棄物」「津波堆積物」「コンクリートガラ」「木くず」の大きく4つに分類され、それぞれの処理工程に送られます。処理はできる限り再資源化・再生利用を行う方針で行われ、最終的なリサイクル率は96.1%※を達成しました。
全体フロー図
混合廃棄物
混合廃棄物は処理量全体のうちの約7割を占めており、粗選別や破砕選別を行い、危険物や金属、コンクリートガラ、アスファルトガラなどの分別を行った上で13種類に分別・リサイクルし、可燃物については焼却処理を行います。焼却後の主灰については造粒固化を行い、土木資材としてリサイクルしました。
粗選別ヤード
混合廃棄物は、広大な粗選別ヤードでまず重機によりコンクリートガラやタイヤ、大きな木くずなどのリサイクル可能品を選別します。
ガスボンベなどの危険物や写真・アルバム等の思い出の品も人の目と手で丁寧に分別します。
破砕選別ヤード
4基の振動ふるい機と手選別ライン、磁力選別機、風力選別機等8つのラインにより、リサイクル可能なもの、不燃物、可燃物、土砂(細粒分)等に分別します。
造粒固化
焼却灰のうち、主灰(燃えがら)を不溶化し、良質な地盤材料(粒状体)に改良します。
コンクリートガラ
コンクリートガラは破砕した上で土木資材として再利用します。
木くず
木くずは破砕した上で焼却処理のためにバイオマスボイラに送られます。バイオマスボイラで得た熱は造粒固化設備のストックヤードにて焼却灰(主灰)の乾燥に利用します。また、木くずは地域内の工場でも燃料やボード原料等に活用されました。
国内最大級の土壌洗浄を実施
津波堆積物は、津波により海底から運ばれた泥や砂が堆積したもので、木くずや金属くず、廃プラスチックなどと渾然一体となっています。また、有機物や有害物質が混入している可能性もあります。この津波堆積物のうち、有害物質に汚染されているものと、混合廃棄物から分類された「ふるい下」と呼ばれる細かな木片などが混じった30mm以下の土砂については、土壌洗浄処理が行われました。石巻ブロックでの洗浄処理量は約50万トン、1日あたり2,000トンで、この量は国内最大規模となります。
洗浄処理後生成された「洗浄砂」は河川工事のサンドコンパクションパイル工法用材料として、「洗浄礫」と「汚泥改良材(汚泥を不溶化処理したもの)」については、石巻港の埋め立て資材として再利用されました。
空間線量率高速計測システム
石巻ブロックでは、処理施設から搬出を行うすべてのダンプトラックの空間線量率を計測する必要がありました。そこで、搬出する車両の空間線量率を自動計測するシステムを開発、導入しました。本システムはこれまでは作業員が手動で数分かけて計測していた空間線量率を、自動でかつ、1台あたり30秒以内で計測することができ、作業効率の向上と安全性を飛躍的に向上することができました。
トラックスケールと一体化することにより、ダンプの重量と空間線量率を同時に計測することができます。
石巻の復興のシンボルに!
働きやすい職場環境の整備と地域経済活性化のために
石巻ブロック災害廃棄物処理業務には、多くの地元の方々が作業に従事しています。地元の方が作業に従事しやすいように、鹿島JVでは働きやすい職場環境づくりのための様々な取組みを行いました。また、この廃棄物処理事業は石巻復興のシンボルとして注目されており、地元経済の活性化のための取組みにも力を入れています。