沿岸域の広域地下水流動評価技術
海水準変動を考慮した超長期の広域沿岸3次元密度流解析
地層処分場サイトの調査初期段階においては、地下施設の設置に適した地下水の流れが緩やかな位置の抽出や、設計・安全評価への情報提供などを目的とした、広域地下水流動評価解析が行われます。この解析では、将来の安全性を評価するため10万年オーダーの長期間を考慮することが重要です。
特に沿岸域の場合、隆起侵食等による地形変化に加え、氷河期サイクルに対応した海水準変動や、塩分濃度の違いによる密度差に起因する密度流を考慮した解析が必要です。
鹿島ではこれらに対応した地下水流動・物質移行解析が可能です。

海水準変動による海岸線の移動及び海面高さの変化のイメージ
- キーワード
- 地下水流動、放射性廃棄物処分、密度流、海水準変動
海水準変動と密度流を考慮した地下水流動・物質移行解析
海水準変動は、気候変動による氷河の周期的な拡大・縮小の繰り返しにともなって海水面の高さが変動する現象で、侵食速度や地下水流動に変化をもたらす可能性があるため、地層処分が対象とする時間スケールにおいては、これを考慮した地下水流動評価を行います。
また、沿岸域では、河川水が海水に流れ込む場合など、塩分密度の異なる流体が重力の影響で互いに移動する密度流が生じます。このため、海水準変動と密度流を考慮した地下水流動評価では水頭差と岩盤の透水性に起因した地下水流れと物質移行を同時に解く連成解析を行います。

密度流解析による地下水中の塩分濃度分布と海水準変動による分布領域の移動の例

海水準の長期変動及び密度流を考慮した3次元広域地下水流動解析結果の例
各時間断面での解析を効率化するための環境の構築
地形変化や海水準変動を考慮する地下水流動・物質移行解析では、各時間断面における境界条件での解析を繰り返し実施することになります。
鹿島では地下水流動・物質移行解析には汎用解析コードConnectFlowを用い、Pythonにより境界条件の切り替え(タイムステップの更新)を自動化しました。これによって、解析モデルを時間的に離散化して取り扱い、各時間断面における海水準と地形(別途解析により算出)による大局的な動水勾配の変化を考慮できるように解析環境を構築しています。
解析評価例
事例として、地質データなど公開情報が豊富な北海道幌延地区を題材に、解析モデルを構築して地下水流動評価を実施した結果を示します。この事例では、地下水流速の比較的小さい領域が海岸線から沖合10km程度の遠方に広く分布するなどの評価結果を得ることができました。

学会論文発表実績
- 「沿岸部の地層処分における概念モデルを用いた広域地下水流動解析」,JpGU-AGU Joint Meeting,2020年
- 「沿岸部の地層処分における概念モデルを用いた広域地下水流動に関する一検討」,土木学会,第75回年次学術講演会,2020年
- 「海水準変動を考慮した三次元密度流解析モデルに関する二,三の検討」,土木学会,第76回年次学術講演会,2021年
- 「沿岸サイトの長期地下水流動評価と粒子追跡線に係る検討」,土木学会,第76回年次学術講演会,2021年
