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東日本大震災における鹿島の取組み

新区界トンネル工事

宮古と盛岡を結ぶ復興支援道路の最長トンネル

宮古盛岡横断道路は、三陸沿岸の岩手県宮古市と内陸の盛岡市を結ぶ全長約66kmの地域高規格道路で、復興支援道路として事業化され建設が進められています。このうち、鹿島JVが担当する新区界トンネルは、同道路の最大の難所と言われる区界峠を貫く全長約5kmの長大トンネルです。完成すると東北地方で3番目、岩手県内で一番長い道路トンネルとなります。

2020年12月5日、開通を迎えました。

令和2年度土木学会賞 技術賞(Ⅰグループ)

図版:イメージ

工事概要

宮古盛岡横断道路 新区界トンネル工事

発注者
国土交通省 東北地方整備局 岩手河川国道事務所
工事場所
岩手県宮古市区界~盛岡市簗川地内
施工者
鹿島・東急特定建設工事共同企業体
工事概要
本坑 L=4,998m 内空断面積94.9m2 避難坑 L=5,045m 内空断面積15.5m2
工期
2014年2月~2019年8月(1期工事・2期工事)
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完了のご報告

日本初の4ブームフルオートジャンボ等最新技術を採用し、スピード施工を実現

岩手県の沿岸部・宮古市と内陸の県庁所在地・盛岡市を結ぶ宮古盛岡横断道路は、復興支援道路に指定され早期の開通が求められています。現在、宮古市と盛岡市を結ぶ国道106号は唯一の幹線道路ですが、両市の境の区界峠は急カーブ、急勾配が続き、また、冬季は雪のため通行止めが発生する交通の難所でした。区界峠を貫く新区界トンネルの完成は、スムーズな通行や冬季でも安心して通れる道、そして、通行時間の短縮、さらに、災害時や緊急時の命の道として、地元の皆さんの期待も大きいトンネルです。

このため、新区界トンネル工事では、4ブームフルオートジャンボを日本で初めて適用し、高速施工を実現しました。また、先行して避難坑を掘り、そこから分岐した切羽を含め合計4つの切羽で本坑を掘削する等の取組みで、5,000m級の長大トンネルの早期完成を目指しました。冬季はマイナス20℃にも及ぶ厳しい寒さと大雪という自然条件の中、2018年1月に貫通を迎え、2019年8月に工事が竣工しました。

図版:覆工コンクリート工事も終えたトンネル内部の様子

覆工コンクリート工事も終えたトンネル内部の様子

5年7か月にわたり、工事を率いた西川幸一所長は「2014年2月、本州で最も寒い地区での新区界トンネル工事が着工して以来、5年7か月にわたった工事がようやく完了しました。その間、325社に上る協力会社、作業員数延べ約209,000人、延べ労働時間は約167万時間を超え、最大32名のJV職員が日夜奮闘するとともに、工事中の諸問題の解決にあたり、工事に関わったすべての人の熱意と努力の末に復興支援道路の一部となる新区界トンネルが完成しました。発注者である国交省や工事関係者をはじめ、地域の皆様や地元自治体、関係省庁の皆様に最後までご指導いただき、厚くお礼申し上げます」と語っています。

完成した新区界トンネルは舗装工事等を行ったのち、2020年内に開通予定です。

図版:積雪が最大1.5mにも及んだ本坑の坑口の様子(2016年1月)

積雪が最大1.5mにも及んだ本坑の坑口の様子(2016年1月)

図版:4ブームフルオートジャンボでの穿孔の様子(2016年7月)

4ブームフルオートジャンボでの穿孔の様子(2016年7月)

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交通の難所の解消を目指して

東日本大震災からの復興を目指して、国土交通省は太平洋沿岸を南北に走る三陸沿岸道路を「復興道路」として、また、主要な都市と三陸沿岸道路を結ぶ3つの道路を「復興支援道路」として事業化し、各地で工事が進んでいます。宮古市と盛岡市を結ぶ宮古盛岡横断道路も、復興支援道路に指定されています。現在、国道106号は宮古市と盛岡市を結ぶ唯一の道路ですが、両市の境の区界峠は冬季を中心に通行止めが頻繁に発生(10年間で17回)し、また、幅員も狭く急カーブが連続するため、緊急物資の輸送や救急搬送等に大きな不安を抱えています。新区界トンネルが開通すると、急カーブが連続する峠道から、幅員も広くなだらかな傾斜の直線道路となり、冬期間の安全な通行が確保されるとともに、宮古~盛岡間の災害時や緊急時の救助・救援支援、震災からの早期復興にも大きく役立つものと期待されています。

図版:宮古盛岡横断道路 位置図

宮古盛岡横断道路 位置図

図版:国道106号の区界峠は、幅員が狭く急カーブが続き、冬季の通行には注意が必要 → 新区界トンネル完成後は危険なカーブが解消され、直線的となり安全に通行できる

国道106号の区界峠は、幅員が狭く急カーブが続き、冬季の通行には注意が必要

新区界トンネル完成後は危険なカーブが解消され、直線的となり安全に通行できる

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高速掘進への挑戦 早期完成を目指して

新区界トンネルは全長5kmと距離が長いため、幅員12mの本坑と、緊急車両などが通行するための幅員5mの避難坑の2本のトンネルで構成されます。本坑と避難坑は5か所の連絡坑で結ばれます。今回の工事は、本坑4,998mと避難坑5,045mの施工を行います。

早期開通が求められる同トンネルでは、本坑、避難坑の宮古側・盛岡側からの同時掘進や高性能ドリルジャンボの導入など、高速施工に対する様々な取組みを行っています。また、冬期間は積雪も多く、マイナス20℃にもなる気象条件であるため工事は困難が予想されますが、品質の良い覆工コンクリートを打設するための様々な工夫をしながら施工を行います。

図版:本坑・避難坑の平面図

本坑・避難坑の平面図

図版:高性能ドリルジャンボでの掘削の様子

高性能ドリルジャンボでの掘削の様子

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工事の様子

Column 新区界トンネル(仮称) 貫通式

2018年1月11日、岩手県宮古市と盛岡市を結ぶ宮古盛岡横断道路 新区界トンネル工事の貫通式が行われました。式典には発注者である国土交通省東北地方整備局岩手河川国道事務所・清水所長をはじめ、来賓として岩手復興局・山下局長、宮古市・山本市長、盛岡市・谷藤市長、また、工事関係者らが多数出席、約270名が参列して行われました。式典では宮古側、盛岡側それぞれで関係者が発破スイッチを押し貫通を確認すると盛大な拍手が沸き起こりました。その後、清めの儀、久寿玉開披につづき、関係者らによる通り初めが行われ、関係者が貫通点で万歳を行いました。続いて、来賓、発注者、施工者の挨拶、樽神輿の儀、鏡割り、乾杯が行われ、地元宮古市に伝わる伝統芸能である「田代念佛剣舞」が披露されました。最後に万歳三唱が行われ、無事の貫通を祝いました。

図版:宮古側で発破スイッチを押す関係者ら

宮古側で発破スイッチを押す関係者ら

図版:貫通点で貫通を祝い万歳

貫通点で貫通を祝い万歳

図版:法被を纏った工事関係者による樽神輿の行脚

法被を纏った工事関係者による樽神輿の行脚

図版:一同で盛大に万歳三唱を行い貫通を祝った

一同で盛大に万歳三唱を行い貫通を祝った

新区界トンネル(仮称)は、復興支援道路として整備が進む「宮古盛岡横断道路・区界道路」の一部となるトンネルで、長さ4,998mの本坑と5,045mの避難坑で構成されています。本工事では、国内で初めて4ブームフルオートコンピュータジャンボを導入し高速掘進を行いました。また、宮古側、盛岡側から本坑を掘削しつつ、避難坑から仮設の作業坑を本坑に取り付け、最盛期には最大4切羽で掘削を行い更なる高速施工を実現。掘削開始から2年9か月で貫通を迎えました。

現国道の区界峠は、急カーブ・急勾配が続き、また、冬季間は大雪で通行止めになることもある交通の難所です。新区界トンネルの完成により東日本大震災で被害の大きかった沿岸の宮古市と県都である内陸の盛岡市が短時間で結ばれ、かつ、安全に走行できるようになることから、地域住民の期待も大きいトンネルです。今後はインバート工や覆工コンクリート工などを進め、工事の完成は2019年3月の予定です。

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2016年9月

起点側(宮古側)からは、先行する避難坑が2,091m、本坑(第1切羽)が1,080mまで掘削が進んでいます。また、高速掘進を行うため、起点側からは、避難坑から分岐した本坑(第2切羽)の掘削も2016年6月からスタートしています。一方、終点側(盛岡側)からも避難坑1,493m、本坑812mの掘削が進んでいます。本坑では合計3つの切羽により掘削が行われていますが、早ければ2016年末に終点側からも、避難坑から分岐した本坑(第4切羽)を掘削予定です。

図版:新区界トンネル

2016年1月からは、日本初の4ブームフルオートコンピュータジャンボを導入し、掘削を行っています。これまではブームの操作に1ブームあたり1名ずつオペレータが必要でしたが、本マシンは4つのブームを1名の専任オペレータで操作することができ、更なる高速掘進と省人化に挑戦しています。

図版:本坑と避難坑

図版:左側が避難坑、右側が第2切羽に続く作業坑

左側が避難坑、右側が第2切羽に続く作業坑

図版:日本で初めて導入された4ブームフルオートコンピュータジャンボ

日本で初めて導入された4ブームフルオートコンピュータジャンボ

図版:掘削に続いてTAF工法による覆工コンクリート工事が行われている

掘削に続いてTAF工法による覆工コンクリート工事が行われている

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2015年10月

2014年11月、起点側(宮古側)から掘削が開始され、2015年9月末現在、避難坑は1,009m、本坑は532m掘削しています。終点側(盛岡側)も2015年9月下旬より避難坑の掘進が開始され、10月から本坑も掘進を開始する予定です。

図版:起点側(宮古側)の坑口の様子(左が避難坑、右奥が本坑)

起点側(宮古側)の坑口の様子(左が避難坑、右奥が本坑)

図版:本坑内の様子

本坑内の様子

図版:本坑施工中の様子

本坑施工中の様子

図版:避難坑施工中の様子

避難坑施工中の様子

Column 地元の期待を感じて─安全祈願祭

2015年6月28日、新区界トンネルの安全祈願祭が、建設中の本坑内で行われました。式典には、工事関係者をはじめ、近隣の小学生ら地元の方も参加しました。鍬入れは宮古市長、盛岡市長、国交省岩手河川国道事務所長と地元の門馬小学校の児童3名が行い、工事の無事安全を祈願しました。また、地元の伝統芸能である簗川高舘剣舞が奉納され、式典を盛り上げました。早期開通への地元の皆さんの期待を感じながら、安全施工への誓いを新たにしました。

図版:鍬入れの儀

鍬入れの儀

図版:地元の方により披露された伝統芸能「簗川高舘剣舞」

地元の方により披露された伝統芸能「簗川高舘剣舞」

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