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大空間構造
自由なレイアウトを可能にする鹿島の構造技術
医療制度や医療技術は日々変化進歩を遂げています。それに合わせて、建物は医療環境の変化に対して柔軟な対応を求められています。鹿島は医療環境の変化に対して柔軟に対応できる骨格(構造)を実現できる技術を開発し、提案しています。
大空間構造の採用で柱が少なくなることでレイアウトが自由になるだけでなく、死角の少ない安全な空間の実現が可能です。
キーワード
- フレキシビリティー、無柱空間、大空間、経済性、耐震性、KIP構法、KIP-RC構法、安全
コンクリートと鉄骨のメリットを併せ持つ「KIP構法」
KIP構法(KIP:Kajima Improved Panel)
圧縮力に強い鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)柱と、曲げに強い鉄骨(S)梁のそれぞれの長所を活かし、大きなスパン(柱間隔)の広々とした空間を経済的に実現できる鹿島独自の構法です。特に、中低層の建物に適しており、病院のような建物の安全性とフレキシビリティの両立が強く求められる場合に有効な技術です。
- 経済的な大空間:広い空間を短い工期で施工可能
- 優れた耐震性と経済性:建物全体の構造を最適化
- 自由なレイアウト:プランの自由度、フレキシブル性が向上
- 無柱空間で見通しがよくなる
KIP構法の高い耐震性
鉄筋コンクリート造をはじめとする各種構造の地震被害として「柱梁接合部」の破壊事例が多数報告され、この部分が耐震性に大きく影響することが認識されています。KIP構法は数多くの実験、解析により「柱梁接合部」の設計法を確立し、日本建築センターの構造評定を取得しています。耐震性に優れた構法と言えます。
KIP-RC構法
KIP構法から生まれたKIP-RC構法は、柱を鉄筋コンクリート造(RC)、梁を鉄骨造(S)とした複合構造で、2010年に日本建築センターの構造評定を取得しました。KIP構法との違いは、柱がRCになることで芯鉄骨がなくなる点です。施工条件が適合すれば、経済的なメリットがより大きくなります。
外周の柱と梁をRC、内部の梁をSとしたKIP--RCの1スパン構造で広い無柱空間(16m×33m)のリハビリテーション室を実現。将来のリハビリ内容の変更に柔軟に対応でき、スタッフからの見通しがよく安全に見守ることができる空間となっています。他の階では自由度の高いプランニングが可能となっています。
適用事例
外来・診療部門の無柱空間
病院の外来部門と診療部門には、構造に制約されない広くて自由な空間が求められます。しかしながら多くの病院は上階の高層部が病棟で構成されているため、病室にあわせた柱割が低層部の空間に影響を与えていました。病棟階の柱割りの影響を受けずに自由なレイアウトが可能になる外来・診療部門の無柱空間を様々な技術で実現します。
9mスパンの柱割と低層部の無柱大空間
医療施設では一般的に6mスパンの柱割ですが、プランニングの自由度やフレキシビリティを考慮して9mグリッドの純ラーメン構造を採用することで将来の様々な変化に対応が可能となります。
一方、低層部に配置される診療部門は、画像診断機器を導入したハイブリッド手術室や診断・治療機器の大型化などに柔軟に対応でき、自由なレイアウトが可能な無柱空間が必要となります。上階の影響を受けない低層部を拡張して27mのロングスパンにすることで常に最新の医療機能に更新可能なフレキシブルな大空間が確保できます。
診療部門が配置される低層部において手術部や画像診断部については、病棟直下から外して無柱大空間とすることで水廻りの多い上階からの万が一の漏水リスクを軽減するとともにロングスパンによるフレキシビリティを確保できます。
また、高層部直下から外すことで建物全体の高さを変えることなく、必要な部分だけ階高さを増すことができ、効率的な全体計画とすることができます。
- 上階もフレキシブルな9mスパン
- 上階のレイアウトに制約を受けない無柱大空間
- 万が一の上階からの漏水や振動のリスクを低減
- 充分な階高の確保
ハットトラスとテンションコラムの採用による無柱空間
敷地に制約があり、低層部を張り出すことができない場合は、低層階と病棟階の間に上部の柱を支える強度な構造体を設備階として中間階に設ける方法がとられてきましたが、建物全体の高さが高くなり、コストアップの要因でもありました。鹿島は病院上部の設備スペースを有効に利用したハットトラスを設置し、そこからテンションコラム(吊り柱)で床を支持することで、低層階の空間が上層階の柱に制約を受けない可変ストラクチャーを考案しました。
- 外来・診療部の自由なレイアウト
- 建物高さの効率化