- 前ページへ
- 次ページへ
透析治療で著名な三友会あけぼの病院(東京都町田市)は、3箇所の施設を統合・移転し、1フロアに141床の人工透析スペースを有する新病院として2015年に生まれ変わりました。
鹿島が開発した睡眠環境向上型病室を初めて導入するなど、先進的な取り組みを多く採用されています。
その具体的な取り組みについて、理事長である南郷俊明先生に設計を担当した星野グループリーダー同席のもと、お話を伺いました。
病院の建て替えを決定されたきっかけを教えてください。
鹿島を選んだ理由を教えていただけますか。
鹿島の技術研究所で見せてもらった技術の素晴らしさや担当者の熱心な対応が強く印象に残っていました。そこで、ゼネコンの技術を活用したコストパフォーマンスの高い建物をつくりたいと考え、鹿島にお願いしました。
新病院では入院患者様の睡眠環境を向上させる新しいシステムを導入されましたが、
そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
新病院を建設しようと決めたのは、入院している患者様や透析治療を受ける患者様にリラックスして、よりよい環境ですごしていただきたいと思ったからです。また、鹿島にお願いすれば高い技術で対応してくれるのではないかと期待したところ、睡眠環境を向上させる病室のシステムを提案してくれました。
当時、あけぼの病院の設計に先立って「睡眠環境向上型病室」の開発を進めていました。実証実験などを通して得られたエビデンスによって、その効果が確かめられたのでご提案したのですが、事業予算内でという条件で採用していただくことができました。
睡眠環境向上型病室は実際に運用されて、いかがですか?
患者様の睡眠がどれくらい向上したかについては具体的なデータを取っていないので分かりませんが、看護部によると患者様からの評判がよいと聞いています。特に顔に当たる風が気持ちいいと言われているようです。
睡眠環境を向上するためには、温度と光、音環境を適切に制御することが重要です。例えば、温度が一定に保たれている4床室においても、それぞれの患者さんが自分の好みや必要に応じて温熱環境を調節できるようになれば、より快適な眠りを得ることができるでしょう。特に顔近くへの風が効果的であることが分かっているのですが、ベッドごとに取り付けられた送風装置で、患者様が自由に風量を調整することができます。
光や音についてはどうですか?
自然光を浴びることが睡眠環境にとって重要との説明は聞いています。確かにその効果もあると思いますが、それに加えて、病室だけでなく病棟全体が明るいことを高く評価したい。職員の働く環境としても優れていますし、省エネにも役立っています。
音環境については、暗騒音を利用し眠りを妨げる騒音を軽減するノウハウがあります。また現在はいびきの音を軽減するための技術を開発しています。
睡眠環境向上型病室以外に新病院に特徴的なことはありますか?
あけぼの病院は関東圏では最大規模の透析床を有しています。最初は1フロアにすべての透析床を設けられないかもしれないと考えていましたが、星野さんに非常にうまくまとめてもらいました。現在、1フロアに141床もの透析床がありますが、患者様が滞りなく入退室できることを工事の前にシミュレーションで検証できたことも大きな成果です。
実際出来上がった透析室は、自然な照明と、リラックスできる落ち着いたスペースとなり、雰囲気の良さにはとても満足しています。
透析は長い時間を必要とする医療ですので、患者様周りの環境を整えることが大変重要です。今回導入したのはサーカディアン(24時間周期)リズムで緩やかに変わる間接照明と、不快な気流を低減しながら効果的に暑熱感を調整できる放射冷暖房、そして吸音性に優れた織物パネルを組み合わせた鹿島独自のユニットシステムです。
竣工から2年を経過しましたが、使い勝手などはいかがでしょうか。
計画に当たっては、私は全体的な方向性のみを指示し、具体的な提案は鹿島に任せていましたが、結果的にそれがよかったのだと思います。この手術室もそうした例のひとつです。
患者様にとって快適な環境と職員にとって働きやすい環境は必ずしも一致しないと思うのですが、双方にとって最適な病院環境を実現してくれたと思います。
施設全体で一貫性のある高品質の性能を備えることができたのは、理事長先生が私たちの提案の多くを採用してくださったからです。
設計を担当した者として大変感謝しています。
三友会あけぼの病院は、昭和53年開院以来、約40年の歴史を通して、地域の皆様の医療を担ってまいりました。老朽化した施設を建て替え、患者様に最新の施設と快適な環境をご提供することに加え、分散した機能を集約し、高度化と専門化が進む医療に対応することが必要でした。