KAJIMA YEARBOOK 2011
近年,今年ほど自然の脅威を痛感した年はなかったのではないか。
東日本大震災は我が国に未曾有の被害を及ぼし,相次いだ台風は風土の脆さを衝いた。
安全で安心できる日常を守るために,建設業は自らの社会的使命を再確認し,被災地の復旧と復興にいまも懸命な努力を続けている。
様々な活動を通じて社会との関わりを深めてきた「鹿島の2011年」を振り返り,これを新たな年を創る布石としたい。
コミュニティとともに成長する職業訓練センター(カンボジア)
鹿島マイクロブラスティング工法
浅草 酉の市
技術研究所 本館完成
戦後間もない1949年,東京都中央区の永代橋近くに創立された当社技術研究所は,建設業界初の技術研究所である。技術研究所は,1956年,研究施設を拡充するために東京都調布市飛田給に移転。
以後,西調布実験場,葉山水域環境実験場,検見川緑化実験場と実験の特性に適した地域にも拠点を設け,次世代を見据えた研究技術開発に積極的に挑戦してきた。その成果は,国内初の超高層ビル・霞が関ビルや
青函トンネル,明石海峡大橋などの建設に現れ,豊かな国土の創出と社会発展を支えてきた。
創立から60年余り——激しく変化する時代の要請に応えるために推進してきた飛田給地区の再構築計画が完了した。本館を構成する研究棟と実験棟に,最先端の研究拠点に研究者が集い,さらなる研究成果を創出していく。
この特集では,当社研究技術開発の中枢として整備された「技術研究所 本館」を紹介する。
社会問題を伝えたくなる景観広告(アメリカ)
北海道新幹線・津軽蓬田(よもぎた)トンネル工事
R-SWING工法
神話の里「高千穂」夜神楽
ZEB実現を目指して
建物運用時でのエネルギー消費量を,省エネや再生可能エネルギー利用により削減し,正味(ネット)で限りなくゼロに近づけようという取組み,
それが「ZEB(ゼブ:ZERO ENERGY BUILDING):ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」である。
地球環境の保全,低炭素社会の構築に向けて,世界がZEBの取組みを本格化させる中,我が国でも,東日本大震災で電力不足問題が深刻化した今夏,究極の節電ビルともいえるZEBが,一段と注目を集めるようになった。当社は2020年までのZEB化実現を目指して,技術開発への挑戦を急展開させている。
今月の特集は,“鹿島のZEB”を多様な視点から解剖する。
地域の工法と材料から生まれた手づくりの学校(バングラデシュ)
当別ダム建設事業本体工工事
クラウドコンピューティング
国技館の「はね太鼓」
地震に備える
「揺れ」からまもる鹿島の技術
未曽有の被害をもたらした巨大地震「東北地方太平洋沖地震」から半年。被災地の一刻も早い復旧・復興が望まれるとともに,今後発生が予想される 東海・東南海・南海の地震や全国各地で起こりうる直下型地震など,これからも大地震に対する万全の備えが求められる。
防災月間の今月は,持続可能で安全・安心な生活をまもるため,当社が培ってきた耐震技術の現在をリポートする。
「食べられる校庭」の教育革命(アメリカ)
アステラス製薬 つくば研究センター5号館
応急復旧戦略シミュレータ
郡上(ぐじょう)の夜に響く音色
日本の新たな大動脈 新東名高速道路
新東名高速道路の整備が進められている。東名高速道路に並行して走るこの新たな高速道路は,内陸側で首都圏と中部圏を結び,日本の大動脈・東名に集中した交通需要を分散させる。
伊勢湾岸自動車道を通じて,名神高速道路や新名神高速道路で近畿圏ともつながり,道路交通のネットワーク化を促進していく。
2012年度中には静岡県内の区間で供用が開始される予定だ。
当社はこれまで17工区で工事を担当し,新東名の建設に携わってきた。
この特集では,整備事業を進める中日本高速道路の協力を得て,
新東名建設の意義や特徴について伝える。
みんなで増築する公営住宅(チリ)
中京競馬場スタンド等改築工事
喜びの響き、不来方の太鼓
愛される建物, 育まれるまち
ビルマネジメントからタウンマネジメントへ
東京・秋葉原の駅前広場としてお馴染みとなったこの風景。電気街,サブカルチャーのまちが「世界のAKIBA」へと飛躍するなかで,国際都市としての新たな顔を象徴する存在となっている。
ITや学術関連のイベントでは,秋葉原といえばこの建物,というイメージも定着した。こうした盛況を支えているのが,ビルマネジメントの手腕である。イベントの集客力,テナントの魅力,そこで働く人々の活力は,建物のみならず,周辺地域のイメージを大きく左右する。
クリエイティブな建物の存在は,新たなまちの創出への大きな力となる。
今月の特集は, そんな施設をマネジメントする鹿島のノウハウを紹介したい。建物のライフサイクルにわたるゼネコンならではの技術とサービスは,ビルマネジメントからタウンマネジメントへと広がりをみせている。
がん患者を受けとめる「家」(イギリス)
(仮称)新宿六丁目N街区計画新築工事
二松學舍大学附属柏中学校・高等学校 新体育館
ウォータースクリーン
貴船、川床の涼音
東日本大震災 復旧から復興に向かって
未曾有の大震災から3ヵ月が経とうとしている。
未だ先の見えない地域や,本格的な復旧まで多くの時間を必要とする場所は多い。しかし,懸命の復旧作業により,少しずつではあるが日常生活が取り戻されている。
一刻も早い復興を,そして安全・安心な暮らしを願う人々。
長期化が予想される復旧・復興に対し,当社はどう向き合っていくのか。
全社を挙げての取組みをリポートする。
台風廃材のリサイクル家具(アメリカ)
小田急小田原線代々木上原駅~梅ヶ丘駅間 線増連続立体交差工事〔土木・第5工区〕
八十八箇所「大窪寺」のお遍路さん
東日本大震災 東北支店の3週間
2011年3月11日14時46分,三陸沖を震源とする東北地方太平洋沖地震が発生した。マグニチュードは国内観測史上最大の9.0を記録。最大震度7の大地震が,巨大津波を伴って日本を襲った。
自然と向き合い,長い年月をかけて培ってきた高度な防災技術をもってしても被災から免れることはできず,東日本太平洋沿岸を中心に激甚な被害がもたらされた。
戦後最大の震災となった東日本大震災。国内外に及ぼす影響は甚大で,復興に向けた作業は長期化することが予想される。国難ともいうべき事態に,復旧・復興支援活動に全力で取り組むことが建設業の使命であり,責任でもある。
その使命と責任を全うすべく,ひたむきな努力を続ける当社東北支店の,発災からの活動の様子を伝える。
まちを明るくするロープウェイ(ベネズエラ)
W-DECKER
新入生で賑わう春のキャンパス
東日本大震災に寄せて
持続可能な水循環型社会へ
鹿島の水環境エンジニアリング
世界人口が69億を超えたいま,食糧やエネルギーとともに水環境が深刻なテーマになっている。
水不足,水質汚濁…。新興国の急速な経済発展に伴い,社会インフラや安全保障の観点からも水の重要性は増している。国内では,上・下水道や処理施設などの社会インフラが相次ぎ更新時期を迎え,成熟社会における持続可能な水環境の再構築が求められている。
水循環システムを支える技術開発とネットワークの構築に取り組む当社の最前線をリポートする。
地産レンガでつくる学校(ブルキナファソ)
鹿島岩蔵 激動の明治を生きた実業家
鹿島岩蔵。鹿島組を創立して,鉄道請負業に進出,当社繁栄の基礎を築いた実業家である。その岩蔵が亡くなって,今年が百回忌に当たる。
創業家二代目として,父岩吉とともに横浜や東京で西洋館建築などを手がけた岩蔵の活動は,明治初年に始まった。その後,全国各地の鉄道工事に従事し,「鉄道の鹿島」の名を確立。鹿島繁栄の礎を築くとともに, わが国経済の発展と近代化に寄与した。
岩蔵の活動範囲は鹿島組の経営に止まらない。軽井沢の開発をはじめ,多くの事業を企画,経営し,政財界の一流人らと幅広く親交を重ねる教養人でもあった。
1912(明治45)年2月22日,岩蔵は69歳で死去した。維新から近代国家に成長してゆく激動の時代を全力で生き抜き,「明治」とともに幕を閉じた生涯だった。
あとを継いだ鹿島精一は1930(昭和5)年,株式会社に組織変更した際,岩蔵の遺徳を偲んで,命日に創立総会を開き,社の創立記念日とした。
鹿島岩蔵百回忌を機に,その活躍の跡を「鉄道」「建築」「開発」「交友」をキーワードに辿った。
水くみが楽しくなる遊具(南アフリカ)
(仮称)うぐいす住宅建替計画新築工事
三島信用金庫本店
多剤耐性菌
袋田の滝 結氷の静寂
国宝 姫路城を鉄骨でつつむ
「平成の保存修理工事」を支える建設技術
巨大な鉄骨で囲まれた姫路城の大天守。瓦と漆喰の,およそ50年ぶりの大規模な保存と修理がはじまる。
素屋根(すやね)と呼ばれるこの鉄骨の囲いが,3年がかりの作業の間,瓦や漆喰がはがれた状態の城を風雨から守る。素屋根最上部には優美な城の姿を間近で鑑賞できるスペースも設置。“半世紀に一度の名所”が生まれる。
こうした工事は伝統技術のイメージが強いが,姫路城に素屋根を架けること自体が,じつは非常に難しい建築工事である。
文化財を護る保存修理工事の,もうひとつの見どころをリポートする。
住民が修理できる石と竹の橋(中国)
9号京都西立体千代原トンネル本体工事, アプローチ部整備工事
甘草(カンゾウ)
もうひとつのお正月
建設業の最前線で活躍する女性技術者
最近,当社が会社説明会を開催すると,女子学生が半分近くを占めることもあるという。ほんの少し前まで,建設業は男性の職場というイメージが強かった。まして建設現場では。建設業に興味を持つ女子学生が増えたのは,この業界で活躍する女性が増加傾向にあることも影響している。制度面や設備面の整備が進んで,建設現場でスケールの大きなものづくりを希望する女性が,能力を十分に発揮できる環境が整った。企業もまた,優れた提案力,技術力を持つ女性の視点や感性を活かしたいとの思いがある。橋梁やトンネル,超高層ビル建設などの最前線で,はつらつと日々の業務をこなす女性技術者たち。職場の雰囲気も変わりつつある。
この特集では,建設業の最前線で活躍する当社女性技術者のものづくりへの思いや,現場での働きぶりをお伝えする。